■よっさん
『メールをもらってから、6ヶ月が経ちました。やっと日本のディーラーとも話しがまとまり、ジェフ・ポーカロ・ソリッド・ウッド・スネアーを発注する事が出来ました。もう、そちらには連絡が届きましたか? ジェフ・ポーカロ・ファンの私にとっては夢にまで見たドラムです。ジェフが使っていたものに出来るだけ近い物である事を願います。これからも、世界中のジェフ・ファンの為にも良いドラムを作り続けて下さい』
■ボリス
『返事が遅くなってすみません。我々は既に日本のディーラーからあなたのドラムの発注書を受け取り、ジャラの丸太の加工に取り掛かっています。一つ提案があります。オーダーによると、あなたは我々のホームページにある写真のような木のラグのドラムを希望されていますが、ジェフのドラムは実はスチール・チューブ・スタイルのラグを取り付けていました。シェルに金属の質量を加えることによって、ソリッド・ウッドのシェルと理想のバランスになるのです。あなたがこのドラムがジェフのものと全く同じスペックで、且つ、同じ音質であるように望んでいるようですので、我々はスチール・チューブ・スタイルのラグをお勧めします。
もう一つ、我々はスネアーのストレイナーをかなり上質のものにグレードアップしました。これはニッケル・ドラムワークス社のデザインによるもので、市場に出ている中ではベストなものです。あなたのスネアーにこれを付けてみてはいかがでしょうか?』
皆さんご存知の一節でしたね(笑) 最近になって気が付いたのですが、ニッケル・ドラムワークス社のストレイナーは色違いですが、パイステ社のSpilit Of 2002 スネアーに使われていますね。続けて......。
■よっさん
『私はジェフ・ポーカロのファンであると共に、良い楽器を手にしたいと思っていますので、勿論、ラグはスチール・チューブ・スタイルでお願いします。そして、ストレイナーはあなた方が薦めてくれるニッケル・ドラムワークス社製のものでお願いします。それと、このスネアー専用のハードケースは無いのでしょうか? あれば、値段はいくらでしょうか? 最後に、"ジェフ・ポーカロ・ソリッド・ウッド・スネアー"は今迄に沢山の注文があったのでしょうか?』
■ボリス
『変更に関して、早速了解してくれてありがとう。残念ながら、ハードケースについては、我々はよいコネクションがないので、日本のディーラーに聞いてみて下さい。
それと、あなたのドラムは極めて珍しいものです。クリスが1992年にジェフに渡したものを除くと、他には1999年までに作られた3つしかありません。アメリカと、レバノンと、スイスへ一つずつです。ですから、あなたのものは、このサイズとしては5番目のものです』
このくだりも、以前と同じです。
■よっさん
『私の注文した”ジェフ・ポーカロ・ソリッド・ウッド・スネアー”は、今はどの様になっていますか? ラグとストレイナーを取り替えましたが、いくらか追加のお金が必要ですか?
ところで、もし、ジェフと同じジャラ・プライのドラムセットを作るとしたら幾らかかりますか? 一つ一つ別々に、タム・タム(8"、10"、12"、14"、16")、バス・ドラム(22")、スネアー(10"、12")と教えてもらえますか?
それと、ジェフがこのドラム・セットを使っている写真などはないでしょうか? 実際にジェフがそれを使っているところを確認したいのですが』
■ボリス
『お返事遅くなって申し訳ありません。こちらは、この時期超多忙なのです。さらに生産を拡大しているところです。あなたのスネアーは少し遅れましたが、規定通りの乾燥の工程に入っています。4週間以内には最終の丸太のカットの工程に入るはずです。こちらでは新たにジェフのドラムを作った時に使用した旋盤を再調整して使用しています。最終の工程はスピード・アップ出来ることでしょう。ご迷惑をおかけしていますが、絶対待つだけの価値があるはずです』
そろそろお待ちかねの、未知の領域に「入・り・か・け・た・質・問・を・し・た・の・に」。 お〜い! 肝心のジャラ・プライのドラム・セットの返事が無いじゃないか!
で、ここから4つのメールは、いつものMayaちゃん(注1)ではなくて、都合というか? 成り行きで? ヴィンテージ・ドラム目利きの達人? 個人輸入の達人! RED氏にご協力をお願いしてのやり取りです。全面的にお願いをした関係上、私からの質問は要点だけをRED氏に伝えてお願いしましたので、いつもの形式とは少し違います。
では、いよいよ深みにはまり始める私“よっさん”をご覧下さい(笑)
■よっさん
『ドラム・セットの値段が知りたい』
■ボリス
『日本にはブラディ社のドラム・セットの在庫を持っている代理店はないので、あなたへは工場から直送で提供出来れば嬉しいのですが。あなたのリクエストのドラム・セットとスネアーは、ハイ・グロス仕上げでもオイル仕上げのどちらにでも出来ます。仕様はどちらでも同じですが、光沢の程度だけが違っています。オイル仕上げの方が自然な木の感じになるでしょう。値段は全部で、ハイ・グロス仕上げなら($*****)、オイル仕上げなら($*****)です。この値段は、工場直送の為の特別価格です。あなたの家までの運賃と通関費用を含んでいます。輸入関税と消費税は含まれていません。日本の税関が直接あなたに請求して来るでしょう。金額の50%を製作に入る前に、残りは舟積みの時にお願いします。製作には約12週間、輸送に3〜4日かかるでしょう。残念ながら、今のところクレジット・カードでは取引出来ませんので、こちらの指定の口座に直接送金して下さい。あなたの夢のドラム・セットを“是非”作りたいと思います。"ブラディ・ファミリー"へようこそ』
正直なところ、この時点ではまだまだ現実的にブラディ社製のフル・ドラム・セットを買おう、なんて微塵にも思ってもいませんでした。見積りの金額を見て“ビックリ?”だったのかなぁ〜 と言いますのも、【ソリッド・ウッド・スネアー × 2.5個 = ジャラ・プライのドラム・セット】だったんですよ! フル・ドラム6点セットにスネアーが2台でですよ! 何故か、妙にドラム・セットが安いように感じたんですよね。そうなると、普通考えません? 購入を? おかしいですかね〜? やはり、かなり深みにはまっていたんでしょうね! 自分では全く気付きませんでしたが(爆笑)
■よっさん
『1.ジェフのドラム・セットは間違い無くジャラ・プライ製なのでしょうか?
2.ジェフのドラム・セットのフィニッシュは、ハイ・グロス仕上げ、オイル仕上げのどちらですか?
3.詳細な見積りを教えて欲しい』
■ボリス
『そうです。これらのドラム・セットは私達の独自の技法による"ジャラ・プライ"です。このメールの終わりに一般的な情報を付けておきました。ジェフのドラム・セットはハイ・グロス仕上げで、あなたが言っている通りのサイズでした。個別の価格は$*****で、全部で$*****です。この値段は小売価格ではなく輸出用のお値段ですのでご理解下さい。セット割引として、$*****でいかがでしょうか。このドラム・セットは技術的にも音質的にも、全く独特の品質の物です。あなたが今までに聞いた事が無いようなものだと思いますよ』
何かね......現実的なのか、非現実的なのか、この頃の私には分かりませんでした。輸入税がどうとか、製作前に50%振り込むとか、輸出用の値段だとかね......。ただ、ジェフの使っていたかもしれないドラム・セットがあるんだな〜! その事を発見出来たことが、ちょっとだけ得した気分ではありましたが。
■よっさん
『ブラディ社とジェフとを結ぶ、“縁(えん)”とか、“縁の品(ゆかりのしな)”か、何かありませんか? 写真が無ければ、ジェフのドラム・セットのオーダー・シートとか何かありませんか?』
■ボリス
『残念ながら、ジェフとブラディ社との関係には確かな証拠はありません。ジェフとパール社の堅い契約によって、我々とジェフとは全て非公式な関係ものでした。彼はパール社と正式なエンドース契約を交わしていたのですが、次第にジェフがパール社よりブラディ社のドラム・セットを好むようになった事をパール社は楽観視出来なくなり、当時パール社はとても慌てていました。
私達は1991年のNAMMショーでジェフのドラム・セットを展示し、ショーの後でそれを彼に渡しました。私達のブースはパール社のちょうど向かい側で、ショーの間、彼は友達の皆に彼のセットを紹介していました。彼はとてもエキサイトしていたようです。その後、ジェフは大きなステージではパール社のセットを使うしかなかったわけですが、1回限りのちょっとした演奏(ベイクド・ポテトによく登場しているような)や、スタジオ・セッションでは、私達のドラム・セットしか使おうとはしませんでした。彼のドラム・メンテナンスを担当していたドラム・ドクターズ社は、「これが彼のお気に入りのドラム・セットだ」と言っていました。ジェフはレイ・チャールズやブルース・スプリングスティーンのレコーディングで、このドラム・セットを使用しています。残念ながら、その年に彼は亡くなってしまったので、このドラム・セットは長くは使われませんでした。NAMMショーでジェフと撮った写真が見つかるかもしれないので、出てきたらメールします』
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