Historical View

LOWDOWN

ボズ・スキャッグス......。
 「彼らとの仕事は驚きと楽しみの連続だったよ。ジェフ、デビッド・ペイチ、デヴィッド・ハンゲイトの3人は僕の目指すとろこの“コンテンポラリー・アーバン・ブラック・ミュージック”のホントの良き理解者だった。“Lowdown”のフィールは作りもんなんかじゃなくて彼らの楽曲に対するナチュラルな感覚そのものなんだ。確かにあの曲はペイチと僕で作ったんだけどジェフのこの曲に対するアプローチは作曲、作詞、アレンジヤーが普通するような役割を遙かに越えてた。単にリズムを刻むってこと以上のものをもたらしてくれたんだ。ジェフはこの曲がどんな風に進むべきなのかバンド全体に示してくれたのさ、まるで騎士がどうやって馬に乗ればいいのか示すごとくね。“Harbor Lights”でも曲全体の方向性を決めてくれた。曲は僕が作ったものだけど、ジェフが彼独自の解釈をつけ加えてくれたことで新たな生命が曲に宿ったんだ。こんなことジェフにしか出来ないよ」。
 そのジェフは“Lowdown”におけるプレイについてこんな風に語っています。
 「あれは僕らの新しいバンド(*注1)に使おうかと思ってデヴィッドが書いた曲が元になってるんだ。彼と僕は1975年後半から1976年前半にかけていくつもデモを作っていた。その中のある曲(*注2)で終わりの方で突然まるで違ったグルーヴに変化する部分があったんだ。バス・ドラムが1拍目、2拍目裏、3拍目の16分音符、ハイ・ハットは全体を通じて16分音符を刻み、スネアを2,4拍目に入れるというものだった。ボスが“この曲をやりたい”って言ったんだけど、デヴィッドが“今度僕等が作るグループのための曲たからだめなんだ”と言った。でも、“終わりのところならいいよ”と言うから、その部分を使って“Lowdown”を書き上げた。それにボズが歌詞やメロディを書き加えて、みんなでスタジオに入った。あの頃僕はアース・ウインド&ファイアーを良く聴いていて、さっき言ったグルーヴを彼らが16分音符の代わりに4分音符でやっているのを知ってた。だからあの感じを8分音符でやってみようよということになったんだ。でもいざそれをやってみたらプロデューサーのジョー・ウィザードが“16分音符でいってみたら?”って......。確かにこの年といえばディスコが流行しだした時だったけど、僕はそっちに興味がなかったから“そういうのはやらない方がいいよ、グルーヴをめちゃくちゃにしたくないだろう”と答えたんだけど、彼もボズもデヴィッドも“一度やってみたら”と言うから、それで16分音符のハイ・ハットをオーバー・ダビングしながら、アクセントなんかも入れて入ったんだ。あれはホントに面白いセッションだったね」......リットーミュージック刊“ドラムブラザー”より
 こうして完成した『Silk Degrees』ですが、とりわけ“Lowdown”は“Rossana”と肩を並べるほど程のジェフの名演中の名演と言われるようになります。
 
 『Silk Degrees』からの第一弾シングルは"Its Over"でありこれはマイナーヒットに終わりましたが、1976年夏にリリースされたセカンド・シングルの"Low down"がボズにとって初めての全米No.1シングル・ヒットとなりました。この間ボズ・スキャッグスは精力的にコンサート・ツアー(*注3)を行い『Silk Degrees』に爆発的なヒットをもたらします。勿論このツアーにはジェフ、デビッド・ペイチ、デヴィッド・ハンゲイト等も参加していたようです。そしてジェフはボズ・スキャッグスのバック・バンドの一員として1976年9月25日にスティーヴ・ポーカロ共々、米TV番組『Saturday Ngiht Live』(*注4)に出演を果たします。こう考えるとこのツアーにもスティーヴ・ポーカロは参加しているんでしょうね。

 結局1976年末までにアルバムは200万枚を売り、2年半に渡りチャート・インし続け、ボズ・スキャッグスにとっては最大級の大ヒット・アルバムとなりました。これにより『Silk Degrees』はグラミー賞において“アルバム・オブ・ザイヤー”を含む計5部門でノミネートを受けることとなり、"Low Down"が最優秀R&Bソングを受賞しました。
 
  この年ボズ・スキャッグスと活動を共にする一方で、ジェフの元には仕事の話が猛烈に舞い込んでくるようになっていました。ある目標に向かっていたジェフはこれらの仕事を確実にこなしていきます。
 「あぁ、忙しい時には一日で三つのセッションをこなすこともあるね。朝、ヘレン・レディのアルバムをやって、それから午後はストライザンドとのセッション。彼女とのセッションではいつもとは別のドラム・セットを使うんだ。生のストリングスが入ったりするからね......彼女とのセッションは殆ど一発録りでやるんだ。それから、夜にはトミー・ボーリンとのセッション。彼とやる時にはヘッド・バンドを巻いて、鹿皮のブーツを履いて行ったかもしれないよ。ようはそれぞれ違った雰囲気に自分をしてからそれぞれのセッションに参加したんだ。環境を変えながらプレイするのは面白いよ。僕はあくまで自分自身であることには変わりないんだけどね。だから、もしドリー・パートンとプレイするとしたら、その時も僕は雰囲気もプレイ・スタイルも他のフィールの曲をプレイする時とは全く変えてやるね。こういったことは覚えようと思ってやることじゃなくていろんな曲を沢山聞いたりプレイしているうちに自然と出来るようになるんだと思うけど。
 こういった仕事についてもう少し話すと......、もし、君が初めてのセッション・ワークをやるとこになったとしよう。まだこの業界では君のことは誰も知らないんだ。コントラクターが君のボスってわけだ。もしこのセッションで君がミスったら彼らは二度と君を雇わないだろう。確かに多くのプレッシャーがあるんだけど、でもこれは君に訪れた最初のチャンスなんだ。まず絶対にしなくちゃいけないことは君の全身全霊を持ってこの曲をプレイしてコントラクターやプロデューサーに強く印象づけることだ。得てしてこういう時は派手なプレイをしがちだけど、そうじゃなくてタイム・キープすることに徹するべきだと思うよ。派手なプレイをするよりもむしろレコーディング当日になっても未だ曲のアレンジや構成が決まってないような連中に対してはその手の仕事を手助けしたりする方がいいんじゃないかな。ただこういう時にこそ曲のヴァース、コーラス、ブリッジ、ダイナミクスに対するセンスの良さが問われるんだ。だから出来る限りベストなタイムキープをすることだね、それはシンプルであればシンプルである程いいと思うよ」。
 とまぁジェフによる“How to play on the first yours recording session”でした! この中で語らているトミー・ボーリンのレコーディング(*注5)はジェフにとってかなり思い出深いものだったみたいですね。TOTOブレイク後のインタビューで彼の名前を数多く出していますよね。

 さて後のTOTOのレコーディング・セッションやライブにおいてなくてはならない存在となる男“レニー・カストロ”と出会ったのもちょうどこの頃のことでした。
 「僕がジェフと初めて顔を合わせたのは確かダイアナ・ロスの“Baby It's Me”を演ってる時だったと思うよ。彼とは直ぐに気が合ってね。まるで昔からの知り合いかのようだった。そしたらセッションの終わりにジェフが出し抜けに“僕はボズ・スキャッグスと仕事をしてるんだけど、ライブの準備をしてるんだ。よかったら見に来ないかい?”ってね。それで僕も一緒について行ってセット・アップをした。僕の印象は、これは簡単なオーディションって感じがしたんだ。それで随分と長い間プレイしたんだけど......ついに痺れを切らしてジェフにこう言ったんだ“ジェフ、誰も僕に何も話してくれないんだけどどなってるんだい?”って。そしたらジェフは“君は今夜ギグに出るためにここに来たんだろ”ってね。ジェフはボズに既に話をつけていて了解を取り付けてたんだね。
 それからこんなこともあったよ。1977年の夏にニューヨークのエヴェリー・フィッシャー・ホールでショーをやったんだけど。ある時突然停電になったんだ。4曲目をプレイしてる時だったんだけど。最初にキーボードーの音が出なくなった。その時にジェフの表情は“一体どうなったんだ?”って顔してた。クルー達がそこら中走り回ったりして、そのうちにライトも消えてしまって、演奏してたのはジェフと僕の二人だけになってしまったんだ。僕等は直ぐにこの停電は解消されるって思ってプレイを続けたんだけど、そのうち客達が“ドラム・ソロをやれ”てって騒ぎ始めたんだよ。ジェフがドラム・ソロをやりたがらないのを知ってるだろ。彼は慌ててステージから逃げ出したよ。その夜はホテルの部屋からみんなでニューヨーク中が大騒ぎになっていたのを眺めてた。あれは凄かったよ」。 

(*注1)
あれは僕らの新しいバンド
......
ご存知TOTOのこと。

(*注2)
ある曲
......
"Tale Of A Man"のこと(?)。

(*注3)
詳しくはこちらから

(*注4)
詳しくはこちらから

(*注5)
TOMMY BOLIN_TEASER
CBS SONY INC.

1. THE GRIND
2. HOMEWARD STRUT
3. DREAMER
4. SAVANNAH WOMAN
5. TEASER
6. PEOPLE, PEOPLE
7. MARCHING POWDER
8. WILD DOG
9. LOTUS

GO! 『Session Works』

(*注6)
DIANA ROSS_BABY IT'S ME
MOTOWN RECORDS.

Side-A
1. Gettin' Ready For Love
2. You Got It
3. Baby It'S Me
4. Too Shy To Say
5. Your Love Is So Good For Me

Side-B
1. Top Of The World
2. All Night Lovers
3. Confide In Me
4. The Same Love That Made Me Laugh
5. Come In From The Rain

GO! 『Session Works』

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