Historical View

顔合わせ

ジェフの次なる大きな転機はボズ・スキャッグスのアルバム『Silk Degrees』(*注1)への参加でした。一般的なTOTO伝説ではこのレコーディング・セッション中にジェフとデヴィッド・ベイチが新しいバンドを結成することを決めたことになっていますが、TOTO結成20周年アルバムとしてリリースされた『TOTOXX』のライナー・ノーツで明らかになったように「半分は本当で半分はウソ」ということです。実際にはスティーリー・ダンの『うそつきケイティ』の録音中もジェフとペイチは時間が許すとスティーブ・ルカサー達とライブ等を行っていたようですから、きっとそんな流れの中で“いつか自分達のバンドが持てるといいな”と話し合っていたのでしょう。そのメンバー探しの期間がちょうどこのボズ・スキャックスと仕事をしていた時期とリンクしていた、というのが真相なのでしょうね。
 
 そのボズ・スキャッグスは1975年初頭、次作となるアルバムの準備に取りかかっていました。「ジェフとはプロデューサーのジョー・ウィザードを通じ知り合った」と語るのはボズ・スキャッグス。
 「ちょうどニュー・アルバムの録音に備えていろいろ曲を書き溜めていた時期で、いつでもスタジオに入れる状態だったんだ。それでジョーがどこからか有能な若手のミュージシャンの名前を聞きつけて来たんだ。それがジェフ、デピット・ペイチ、デビッド・ハンゲイトだった。その頃この3人は皆別々に活動してたんだけど、いくつかのセッションでは顔を合わせたりしていたらしくてね。ジョーはこの3人を一緒に組ませたら素晴らしいリズム・セクションが出来るんじゃないかって考えたわけさ。そこで我々は一緒に集まってみて旨くいくかどうか試してみんだ。結果は言うまでもなく全く問題なかったね。これが『シルク・ディグリーズ』を作る母胎となったんだ」。

 ところが時を同じくして『Silk Degrees』とほぼ同一のメンバーによるレコーディングが別のアルバムで行われていました。こちらはボズ・スキャッグスのプロデュースによるレス・デューデックのアルバム『Les Dudek』です。『Silk Degrees』のリリースは1976年の春先、そして『Les Dudek』も1976年中であるわけですが。実はジェフ達とボズ・スキャッグスの顔合わせはこの『Les Dudek』のレコードディングの際に既に実現していたようなのです。1980年頃CBS/SONYよりデジタル・マスターシリーズという高音質を謳い文句にしたアナログ盤があったのですが、その中に『Silk Degrees』も含まれていまして、これに添付されたライナー・ノーツにはボズ・スキャッグスの簡易年表が記されています。それによると「1975年の早い時期にサン・フランシスコにて『Les Dudek』のレコーディングが開始され、そのレコーディングを通じてジェフ達と知り合う」と記述してあります。「その後ロサンゼルスに場所を移してレコーディングは続行されるわけですが......。」と、ここまで読むと「う〜ん」そうなのかと思っていたのですが、ここにまた新たな新事実が! 
 『Silk Degrees』のレコーディングはアルバム・クレジットよりロサンゼルスにあるダヴレン・レコーディング・スタジオとハリウッド・スタジオで行われたことになっているわけですが、近年リリースされたボズ・スキャッグスの『My Time: A Boz Scaggs Anthology 1969 - 1997』のライナー・ノーツには"It's Over"は1975年5月サン・フランシスコで録音されたことになっています。どうも話しがややこしくなってなって来たので私なりに整理してみると、まずボズ・スキャッグス自身がニューアルバムの準備としてジェフ達の起用を考えていた所、それより先にレス・デューデックのレコーディングを開始することとなり、その場でジェフ達を起用して感触を確かめた。ことのほか感じが良かった為にデモ感覚で"It's Over"を録音。これで成功を確信したボズ・スキャッグスは場所をロサンゼルスに移し本格的にレコーディングを開始したのが1975年9月頃。どうでしょう、こんな風に考えると筋が通るように思えるのですが、ちょっと話しを作り過ぎでしょうか? それとも逆にサンフランシスコで"It's Over"をボズ・スキャッグスが録音し、その出来の良さからレス・デューデックの録音にジェフ達を起用したのか? 正確なところは不明ではありますが、大方こんな感じだったと思われます。更に詳しいことをご存知の方がいらっしゃいましたら情報をお寄せ下さいませ。 
 こう考えるとスティーリー・ダンとの『Katy Lied』のセッションが終了する頃には早くもボズ・スキャッグスとの出会いが待っていたわけですね。う〜ん。
 この辺の話しはバラバラに散らばっていた資料を基に適当につなぎ合わせた私の当て推測ですので、もしかしたら当たっている部分もあるかもしれないし、全く違っているかもしれませんが、こんなことも考えられる程度の読んで下さい。
 
 そしてもう一つ面白いのが、これらのアルバムとほぼ同時期にリリースされたものの中に何とまぁジェフがそのプロジェクトから弾かれる形となってしまったスティーリー・ダンの『The Royal Scam』もあります。奇しくも同アルバムが『Silk Degrees』と同時期にリリースされたことは何やら皮肉めいたものを感じてしまいます。 ついでにもう一つ付け加えておきますと、1975年に行われたセッション中になんと日本国籍のバンド名があります。それはN.S.Pの『2年目の扉』(*注2)です。リリースは1975年8月ですから、これまた上記のセッションと同じような時期に行われていたものなのでしょう。

(*注1)
BOZ SCAGGS SILK DEGREES
CBS SONY INC.

1. What Can I Say
2. Georgia
3. Jump Street
4. What Do You Want The Girl To Do
5. Harbor Lights
6. Lowdown
7. It's Over
8. Love Me Tomorrow
9. Lido Shuffle

Boz Scaggs_Silk Degrees

(*注2)
N.S.P『2年目の扉』
AARD-VARK CANYON (PONY CANYON)
PCCA00904CBS SONY INC.

1. 春をみつけた
2. 17才の詩
3. 都会
4. 北国の三月
5. リズムもよろしく
6. お茶の一服
7. 君を誘惑
8. スープ・イン・ザ・モーニング
9. お休みの風景
10. あの娘と日曜日
11. ねぼけまなこのスーパーマン
12. 押したおしたい

N.S.P_2年目の扉

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