Historical View

挫折(?)

既にツアーに対する興味を全く失っていたスティーリー・ダンは次なるアルバムの制作にとりかかります。『幻想の摩天楼』(*注1)としてリリースされることとなるこのセッションにおいてスティーリー・ダンはこれまでと違う感じのドラム・サウンドを求めていたのです。彼らは『プレッツエル・ロジック』、『うそつきケイティ』という二枚のアルバムに参加し、スティーリー・ダンにとっての最後となっていたワールド・ツアーにおいても重要な役割を果たしたジェフを今回は外し、代わりに新しいドラマーを起用しました。それがバナード・パーディとリック・マロッタの二人だったのです。ジェフはこの経緯についてあるインタビューで心情をこんな風に吐露していました。
 「『プレッツェル・ロジック』で2曲、続くツアーで一年半以上を一緒に回り、その次の『うそつきケイティ』では一曲を除いて全部こなしたんだ。僕はそれらのアルバムでのプレイを本当に誇りに思ってた。 そして次のレコーディングをとっても楽しみにしてたのに......。そんなある日ウォルター・ベッカーが電話して来たんだよ“ジェフ、次のアルバムの為のデモを作りたいんだけど、君のドラム・セットを借りてもいいかな。自宅でいろんなアイディアを試してみたいから”ってさ。そう聞かれた僕は数週間後にはまた彼らのレコーディング・セッションが出来ると思って興奮したんだ。それから2〜3週間過ぎても誰からも何の連絡もなかった。そのうちある友人から“スティーリー・ダンの連中がスタジオで新しいアルバムの制作に入ったけど、知ってるかい?”って聞かされたんだ。ちょっと待ってくれよ、慌てて僕はプロデューサーであるゲイリー・カッツに電話したよ。そしたらその通り彼らは僕抜きでセッションを始めてったてわけさ。おまけに僕のドラム・セットを使ってね」。
 ジェフはこの時の気持ちを皮肉っぽく告白しています。
 「勿論傷ついたよ。なんと言ってもスティーリー・ダンは僕が夢中になったバンドの一つだし、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーは僕にとっては正に“神”だったからさ。でもまぁ結局僕はそのことで悪態をついたりしなかったんだ。最終的に完成したアルバムを聴いてみて納得したってわけさ。『幻想の摩天楼』でのバナード・パーディのプレイからは他のアルバムでのどんなドラマーのプレイよりも多くのものを学ぶことが出来たんだ。そんなわけで、今じゃ彼らがあのアルバムで僕に声を掛けて来なかったことに感謝してるよ」。
 なんということでしょうかね。この辺がジェフの優等生ぶりなのでしょうか。確かにこのアルバムにおけるバナード・パーディのプレイには脱帽せざるを得ないものがありますし、彼独自の繊細なタッチはジェフでも敵わないところがありますが......。実際ジェフがよくに口にしていた“Babylon Sisters”のプレイは殆ど神業状態です! 
 
 こうしてスティーリー・ダンとの蜜月活動には一時的に終始符が打たれるわけですが、この事がジェフの音楽活動を挫折させるものではありませんでした。次なる大きな転機がまた直ぐにやって来るのです。

 スティーリー・ダンの活動を詳しくお知りになりたい方はぜひ前述のリットーミュジーック刊『スティーリー・ダン リーリング・イン・ジ・イヤーズ』を読むことをお勧めします。

(*注1)
The Royal Scam
Universal Victor INC.

1. Kid Charlemagne
2. The Caves Of Altamira
3. Don't Take Me Alive
4. Sign In Strangs
5. The Fez
6.Green Earrings
7. Haitian Divorce
8. Everything You Did
9. The Royal Scam

The Royal Scam

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