Historical View

『ハイドラ』

1978年にリリースされたスタンリー・クラークのアルバム『Modern Man』のセッションに参加したジェフですが、残念ながらアルバムの売り曲でもある、ギターにジェフ・ベックが参加した"Rock'n' Roll Jelly"ではドラムの椅子をカーマイン・アピスに譲っています。本来ならジェフがこの曲でもプレイするはずだったのですが......。

 カーマイン・アピス......「俺はある人のセッションをやるんでスタジオにいたんだ。で、ワイフのマーレインが俺を探してサンセット・ブルバードのブロックをあちこち走り回ってたんだ。で、そのうちあいつはとうとう俺の車を見つけて飛びこんできた。俺が"一体どうしたんだよ?"って言うと、あいつは"たった今、スタンリー・クラークから電話があって、あなたに来てもらって、彼とジェフ・ベックと一緒にプレイしてもらいたいんですって"って言うんだ。最初はジェフ・ポーカロが予定されてたんだ。でも、彼は具合いが悪くってね。で、どっちみち俺が行った方がいいだろってことになって、俺はスタジオに行ったわけさ。
 急いでたんで自分のドラム・セットなんて持っていかなかったよ。持ってたのはスネアとシンバルとハイ・ハットと椅子だけ。あとはジェフのセットを使わせてもらったよ。......あれは最高だったね」。

 と、まぁ、こんなわけでジェフとジェフ・ベックとの夢の競演の実現はならなかったわけですが......ちなみにドラム・セットはジェフのものだったそうで、その辺を意識して"Rock'n' Roll Jelly"を聞いてみて下さい。しかしジェフもこういうビックなチャンスを逃すのって残念がったりするものなのかな〜

PLAYER誌 インタビュー 「アルバム『宇宙の騎士』の大成功の余韻が消えぬうちにと......」レコード会社から催促されるような形で1979年4月頃より始まったニューアルバムのレコーディングは、その年の11月10日『ハイドラ』というタイトル名でリリースされました。このリリースに先立ちジェフがアルバムについて語っているので、こちらを紹介します。

_今度のアルバムについて話してくれるかな?
ジェフ :レコーディングはハリウッドにあるサンセット・サウンドを使って録音したんだ。『宇宙の騎士』のを録音する時もホントはここでやりたかったんだけど、スケジュールの都合で出来なかったんだ。それで今回はここを使って録音を始めた。もう何度も仕事で使ってる所だったから居心地が良くてね、リラックスした雰囲気で録音が出来たからバンドの状態もいつもより良かったぐらいさ。最初の晩に録音した2曲を聴き返してみたら、フイーリングからいうと1枚目のアルバムと似た感じだったね。いいなって思ってるよ。

_1枚目で使う予定だった曲を取り直したりしたの? それとも全部新曲なのかな?
ジェフ :1枚目のアルバムで使うはずだった"Miss Sun"(!!!!)っていうのが1曲あるよ。今回のセッションではそういった曲も含めて、今のところ、弟の1曲を除いて他は全部デヴィッド・ペイチの曲になると思うんだ。で、この前メチャクチャになって仕上がらなかった曲は、ツアーの時にジャムったし、レコーディングする前には1週間位リハーサルをしたから。僕がフィーリングを出して、デヴィッドがコード・チェンジをやったりして曲を再構成したんだ。ま、その間は3曲位しかリハーサルできなかったからスタジオ入りした時は、その3曲からレコーディングをして、他の曲はスタジオで作って、アレンジした感じだよ。割と自然に出来上がったと思う。

_曲を作る時はどんな感じでやるのかな?
ジェフ :ただプレイを始めるだけさ。もう何年も一緒にやってるから、何も言わなくても良く通じるわけ。ペイチがプレイ始めると、どんなフィーリングか、どんな調子にしたらいいかわかるんだ。今度のアルバムの曲はほとんど、そんなヒップな曲ばかりなんだ。
 "Hydra"っていうツエッペリン風の曲があるんだけど、音楽的にはポリリズムを感じさせるような変ったフレーズとコード・チェンジがあるよ。シンプルっていう点からすると"カシミール"タイプだけど、リズムとかアイデアがおもしろいんだ。後は"White Sister"っていうR&Rもあるよ。それから"Mama"っていう曲はR&Bだな、一種のね。他にもR&Bっぱいのが数曲あるけど、どれも普通のR&Bじゃないんだ。どのタイプって言えないね。みんなで顔見合わせて、"これだ、これが俺達のサウンドだ。TOTOのサウンドはこうでなくっちゃ。曲も姿勢も今の俺達そのものだな"って、全部で8曲位になると思うよ。

_レコーディングのやり方は違うの?
ジェフ :いや、テクニックはだいたい同じ。ベーシック・トラックの録音ではトリプル・リズムギターを使ってもないし、考えた以上のことをやろうとは思ってないんだ。いろんなことがわかったからね。
 一番問題なのは、1枚目が出来過ぎだったってことだな。その時のスタジオでは、コンピューター・シンクロナイザーとかいろいろ付いた24トラックの機械を2台使ったんだ。それは音楽上役立ちはしたけど、それをプラスチックの円盤に入れたら、何の変わりもなかったよ。凄いことやってたのにさ、1枚目じゃわかんなかっただろ。雑然とした感じが強く出ちゃって。でも今度のはそうじゃないよ。今度のスタジオでは、せいぜいギター・ソロとヴォーカルをオーバーダブするくらいだろうな。もしかしてキーボードが入るかもしれないけど、でも入れるとしてもそれだけで......あとストリングスとホーンも入れるかもわからないね。
リミックス中(?)のジェフ&ペイチ ロードに出てた時にさ、パーカッショニストとトム・ケリーっていうギタリスト兼ヴォーカリストを連れていったんだ。それは1枚目のアルバムのヴォーカル・アレンジメントが5パート・ハーモニーになってて、それをライヴで再現するにはあのパートをカバーしてくれるような高い声が出る奴を連れて行かなきゃなんなかったわけ。だけど、今度は自分達だけでパフォームできるんじゃないかって思ってるんだ。......1978年『PLAYER』誌より。

 何んとこの『ハイドラ』に"Miss Sun"を加える予定があったのですね......う〜む。しかし、このトラックですが、ジェフの話しを参考にするならば、後に『TOTO XX』に収録されたものとは別テイクということになりますよね。するとこの"Miss Sun"はこのアルバムに調子を揃えたハードなアレンジで演奏されたテイクもあるっていうことなのでしょうか? ちなみにこの『ハイドラ』セッションではこれまた『TOTO XX』に収録されることとなる"Tale Of A Man"の録音も試みていますね。何らかの事情で『ハイドラ』への収録は断念することになるわけですが......

 この『ハイドラ』では『宇宙の騎士』でもその片鱗を垣間見せていたプログレッシブさを一歩進めた、よりアグレッシブさを増したサウンド指向となり、前作からTOTOというバンドがいかに進歩し、より結束力が高まったかを十分にアピールする作品となりました。しかし、その一方ではアルバム全体を覆う重苦しい雰囲気はジャケットのイメージとも重なり、聞き手は非常にブルーな気分にさせられがちです。このサウンド作りをどう捕らえるかで、アルバムに対する価値観が決まってくると思います。少なくても日本においては新たなTOTOサウンドを確立したとして大いに支持を受けることとなります。が、前述のようにブルーなイメージが災いしたのか、本国アメリカでは思ったように売り上げが伸びずに、米ビルボード誌においてアルバムが最高で37位、シングルで発売された"99"が26位と、予想以上に苦戦を強いられました。残念ながら、後年のジェフも"アレ"は日本以外では評価されずに、"商業的"には失敗作であった"などと回顧していたのは残念なことです。
 またデビッド・ペイチによれば『宇宙の騎士』が大ヒットしたことで多大なプレッシャーと期待感がバンドに寄せられていたと語ってもいます。結局マーケット自体は無条件でこのニュー・アルバムを受け入れてくれる土壌があったにも関わらず残念ながら本国では不発に終わってしまいました。それがジェフ達にどんな大きな影響を与えたかは知る由もないわけですが、ツアー終了後、直ぐに次作『ターンバック』の録音に入ったことを考えても、彼らの音楽的な野心を萎えさせるものではなかったはずです。

 アルバム『ハイドラ』に関しましては『Discography』にもテキストをアップしておりますので、こちらも参照して下さい。

Modern Man - Stanley Clarke
CBS SONY INC.
Stanley Clarke _ Modern Man

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Hydra - TOTO
CBS SONY INC.
TOTO _ Hydra








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TOTOXX - TOTO
CBS SONY INC.
TOTO _ TOTO XX

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