World Tour
TOTO 1980 3 13 Tokyo Japan

text Jeff's World
更新日 :
2003.07.31


 あれから、20年余りたった今日まで、この日のショウのことはひと時も忘れたことがなかった。いや、大袈裟な話しなどではなくて、本当にその言葉の通りに、私の脳裏に熱く、固く焼き付けられた演奏なのです。正直、このショウを生で観たというわけでもないのに、たった一本のカセット・テープが私を虜にしてしまったわけです。思えば初めてTOTOの楽曲を耳にした時は「なんだぁ、こんなモノかぁ……」と、さしたる感銘を受けなかったわけですが……。しかし、今もこんな風に酔いしれているわけですから、不思議なものです。

 今でこそ、この1980年の日本公演の音源は複数の公演のものが出回っており、ほぼコンプリートにステージの様子を再現してくれるわけですが、ちょっと前まではFMラジオで放送された1時間弱の音源があるのみで(注1)、実際にライブに行かなかった筆者にとってはどんなセット・リストで演奏されたのかも分からなかったのです。実際のセット・リストは右の欄外を見ていただくとして、その私の手元にあったカセットに収録されていたのは ”Hydra”、”St. Geroge & The Dragon”、”Mama”、”I'll Supply The Love”、”99”、”Tale Of A Man”、”Georgy Porgy”、”All Us Boys”でした。コンプリートなセット・リストと見比べてみるとなんとも大胆な選曲なように思えてしまうわけですが、まぁ当時のそのラジオ番組関係者が苦労して選んだんだ結果なんでしょう。ただ、”Hydra”〜”St. Geroge & The Dragon” の流れを放送してくれたのはには感謝・感激でありましたね。ほんと、この2曲を聴いてTOTOというバンド、そしてジェフ・ポーカロというドラマーに、まさしくぶっ飛ばされてしまったと言って過言ではないと位だと思います。とにかく、恐ろしくリズミカルであり、パワフルであり、センシティブであり、そのくせ妙に泥臭いし。まさに私にとっての理想のドラマー像を具現化したような人・演奏でした。
 
 例によって前置きが長くなってしまいましたが、(1) Prelude はショウの序曲とも言えるもので、もちろんTOTOのアルバムに収録されているような楽曲ではありません。‘70年代のモンスター映画を彷彿させるような雰囲気はまさしくそれ風。断崖絶壁を崖下を背に逃げ惑う主人公、迫り来る一つ目の巨人エンサイクロプス、いやメデューサか?(笑) まさにそんな感じです。そして(2) Hydra のイントロではアルバムと同様にサウンド・エフェクトが導入され、ジェフのカウントを刻むスティック音が響き渡り……そこから始まるわけです。ちなみに(1) Prelude 〜(2) Hydraの間にはバカでかい声で「トト〜」って叫んでいる男性の声がくっきりと収録されてしまってますね。先のラジオで放送されたものも、その他の同日の音源にもかなりはっきりとした声で同様に収録されていますので、相当大きな声で叫んだのでしょう(^^; まっ、こうしてこの声の持ち主は永遠にTOTOファンの耳元に残ることになったわけですが。この声に心当たりのある方はぜひJeff’s World宛にご連絡下さい(笑) それと会場からの声援には早くも「ジェフぅ〜」などと、黄色い歓声が飛び回っていますね〜 当時の音楽シーンにおけるジェフの役割を考えると、この歓声も至極真っ当な事とは思いますが……何んだか嫉妬しちゃうわ〜(^^; 

 12日の項でも書いたようにこの曲での聞き所は、フルエンディングで演奏されていることと、スティーブ・ルカサーが弾くサビ・リフがスタジオ・テイクとは異なり、16ビートのミュート・カッティングを加えられた上で弾かれていることです。まず16ビート・リフについてですが、1982年以降のツアー(サイモン・フィリップス加入後のものも含めて)ではスタジオ・テイクと同様の弾き方であるので、この特徴的な弾き方はこの時だけです。何故こういった弾き方になったのかの理由は全く不明です(^^; ただスティーブ・ルカサーの独自判断ということもないと思うので、やはりジェフの指示なのかな〜 『Historical View』で記述しているように日本公演の前に米国でも数回のライブを行っているわけですが、その時からこのように弾いていたのかもしれないし。この辺りをご本人様にぜひ質問してみたいものです。そして私の聞いたことのある5日、12日、13日のパフォーマンスをそれぞれ比較すると圧倒的にこの13日にテイクが秀逸に感じられます、特にスティーブ・ルカサーのギター・ソロの差は歴然であり「録音が試みられているライブでは特に別格」という私のルカサー論を裏付けてくれています(笑) 

 またエンディングに向けてヒートアップしていく部分については、「キーマンはデヴィッド・ハンゲイト?」 でも記述してみたので、そちらを参考にしていただくとして、いやはや凄いとしか言いようがございませんですね。

 この嵐のようなエンディングに間髪入れづに続く (3) St.George And The Dragon 。アルバ通りにジェフの刻むビートが会場に響き渡ります。ほぉ〜んと、イントロでのこのビートだけででも圧巻ですよね。そして再び、この曲のエンディングでのスティーブ・ルカサーのギター・ソロはまたまた完璧かな。5日、12日のテイクと比較してみても非常に綺麗にまとめられており、いかにも録音をされているのを意識しているかの如くでございます。しかし、それ以上にこの部分でのジェフとデヴィッド・ハンゲイトの二人のパフォーマンスには心を奪われます。二人とも何気ないことやってるのに、その効果は素晴らしいの一語です。ギター・ソロと合い間って、私の心に訴えてくれます。

 (4) Mama これまたほぼ完璧と思われる程にカッコ良く決まった演奏です。ジェフのドラムミングは適度に重くて心地良さは最上。また曲中に散りばめられていることであろうゴースト・ノートは比較的に軽くタッチでプレイされているのか、それともミキシングとの兼ね合いなのか、残念ながら殆んど聞き取れません、入れてないということはまずないと思いますが……。後年のツアーではまるでシャワーのように浴びせかけられるゴーストとは対象的であります。しかして、ほぼパーフェクトな演奏。

 (5) Child’s Anthem は力強さが漲る演奏で、‘90年代突入後の風格がある演奏はまるで別の雰囲気です。続いて、スティーブ・ルカサーのギター・リフで始まる (6) I’ll Supply The Love。そのイントロ部分ではキース・ランドリーがタンバリンを叩く音が聞こえてくるのに意味なくニンマリ。ギター・ソロ部分では前日の演奏のようにパーカッシブなシンセ音が微かに聞こえて来ます。

  (7) Angela はデビット・ペイチによる美しいバラード・ソング。曲のエンディング部分で徐々に盛り上がっていく様は、ショウの前半部のハイライトの一つでしょう。この部分ではボーカルもスティーブ・ルカサーからデビット・ペイチにバトン・タッチ。さぁ、ここからはジェフの叩きまくる荒技に身を委ねちゃいましょう(笑) ご存知の様にジェフはドラム・ソロをやらない人ではありますが、しかし、ここなんてそれ風に、軽る〜くではありますが、片鱗を聞かせてくれてます。

 引き続きスティーブ・ルカサーの唄による (8) 99。 やっぱりこのツアーのTOTOって独特の雰囲気がありますよね。というかジェフのグルーヴ感に独特のものを感じてしまいます。個人的にはジェフのドラミングを考える上で、その特徴を区分けするならばこの1980年までが、その第一期と考えているのですが、皆さんはどう思いますか? そして、前日はギター・ソロの際にチューニングの狂いに悪戦苦闘していたようですが、この日は無難にこなしております.....。いや、無難では完璧なフレーズ群でしたね。この日も例のムーン社製のストラトを使用したかまでは不明ですが。

 (9).Tale Of A Man 。デビット・ペイチによる曲紹介では「これはアルバムに収録されていない曲で、とってもストレンジな曲」と、のたまわっているわけですが、この「strange」って喋る部分にはハーモナイザーらしきエフェクト掛けて声の高さを極端に下げるという.....、お得意の技(^^; を見せてくれます。 例によってオリジナルの演奏とは異なり後半部分のリズム・パターンが変わるパートはカットされたショート・バージョンでの演奏。ジェフのシルキッシュな”One-Hnad 16-Notes”も聞き取れます。ギター・ソロの後半部分ではキーボードによるオートアルペジオ・フレーズが再現されているところに思わずニヤリ。初期のTOTOサウンドを色濃く残しているこの曲は何度聴いてもいいものです。またジェフのヘビーなグルーヴもこのサウンドにピッタリとはまってますね。

 スタジオ版とは少々趣の異なる (10) Georgy Porgy。それは一重にジェフの繰り出すヘビーなグルーヴ感に拠る者だと思われます。特に変わったことをしているわけではないですが、ファンキーというよりは、よりロック感覚的なノリはもう「サイコー」の一言。恐れ入ります。この曲は本来の楽曲の良さも手伝ってか、後年のライブでも、その都度アレンジを幾たびも変えられながら演奏され続けることとなります。エンディング間直の “Georg...y Porg...y, Kiss the girl “ のくだりでのジェフのノリは圧巻。やっぱり、跳ねさせたいのね(笑) それでもって「タ、チ〜チ、タ、チ〜チ、タカ、タ。チ〜チッ」と来たもんです(笑)

 この ”Georgy Porgy” と前曲の ”Tale Of A Man” はいずれも ”One-Hnad 16-Notes” によるものですが、その曲の好対照ぶりが面白いですね。片やノリノリのハードチューン、そしてもう一方はSoul&Rock……。そして、どちらの曲でもジェフのスーバー・グルーヴをサポートしているデヴィッド・ハンゲイトのベースライン。その中身の濃さと言ったらかなりのもの。「私……本当は凄いんです」って、主張しているかのようです。

 続いて同じく『宇宙の騎士』から (11) Rockmaker。スタジオテイクとは異なり、出だしにジェフの「どど・タン」というフレーズが入れられてます。あくまで個人的な感想ではあるのですが、進化し続けるTOTOというグループにとっては、既にこの曲は一昔前の曲といった感がして、この日のセットリスト的には不釣合いのような気もします。ただし肝心の演奏の方は迫力満点で、言うことなしなのですが。

 (12) Keyboard Solo 〜 Guitar Solo を挟んで、(13) Girl Goodbye へなだれ込みます。キーボードによるイントロダクションでは、例のシンセのアルペジオフレーズも再現されてますね。そしてジェフが刻む独特のリフ・パターン「どっタン、タ・どぅ〜タ、た〜ら……」はジェフならではの独特のシャッフル・パターン。イントロ、間奏部分等ではこの「どっタン、タ・どぅ〜タ」(赤文字の部分)に一段と強いアクセントが加えられて演奏されるわけですが、これって聞き手の気持ちの高まりを助長していると思いませんか? これだけ聞いただけでも燃えたぎって来てしまいますよね。 続いての(14) Hold The Line で既にステージは最高潮に達した感があります。ただ、5日分の項でも述べましたが、エンディング部分をこうやってサラリと演奏されてしまうと味気ないですよね〜 やっぱり "Hold The Li------n-----e" っていうヴァースを際限なく繰り返して欲しいものです。そして、一部の締めは(15) White Sisiter。燃え尽きてしまえ、と言わんばかりの演奏に会場の皆さんはさぞグッタりしたことと思います(笑) ジェフはちょっと走り気味なのかな〜?

 アンコールの声援に応えて再びステージに登場。まずはメンバー紹介から。前日の失敗は繰り返さずちゃんとボビー・キンボールの紹介もしてくれました(^^; ちなみにスティーブ・ポーカロはスティーヴンで、スティーブ・ルカサーはスティーヴっていう呼び方をしているので、普段のメンバー間の呼び方はこういう感じで使い分けたりして? じゃ、デビッド・ペイチとデヴィッド・ハンゲイトはどうしてるんだってことになりますが(^^; アンコールの一発目は (16) Runaway。アルバムには未収録な曲で、歌詞的には何を歌っているのか分かりませんが、いわゆるパーティ・ソングというやつですね。曲の後半部分でフリーになるところがありますが、ここで観客を煽るあたりはデビット・ペイチのお手の物ですね。ソニー&シェール時代から似たようなことやってますし、……いや、きっとスティル・ライフ時代からやってるんでしょうね。この頃は紛れもなくデビット・ペイチがショウを引っ張って行くキーマンであったわけです。
 
 二度目のアンコールに応えての (17) All Us Boys ……日本公演の最終日、最後の曲の演奏ということで、さぞかしTOTOの面々も燃え尽きてくれたことでしょう。「サンキュー・ベリー・マッチ、ドウモアリガトゥ」っていうデビッド・ペイチの言葉は本物かな〜
 
 また、前述のようにこの日は最終日ということもあってか、TOTOの面々はラストの曲である、”All Us Boys” の演奏終了後もなかなかステージを去らずに観客への挨拶を行いました。CBSソニー・レコード、UDO音楽事務所に御礼の言葉、そしてツアー・クルー達までもステージへ引き上げた上で最後の挨拶をした模様です。また興奮し切った感のあるデビット・ペイチなどは「次回のツアーでは、10倍のライブをやるぞ〜」などとのたまっておりますね。余程、日本で受けた歓迎ぶりに感動したのでしょう。いやはや、何とも素晴らしい演奏でした。本当の最後に場内に流されるB.G.M.はこれもTOTOが用意したものなのか? とすると最初に流されたPrelude と対になっているということなのでしょうか?



Shibuya Kokaido
_ Tokyo, Japan


March 13, 1980


TOTO :
Jeff Porcaro : drums
David Paich : vocal, Keboards
Steve Lukather : guitar, vocal
David Hungate : bass
Steve Porcaro : Keyboards
Bobby Kimball : vocal, keyboards

Support Member :
Keith Landry : backing vocal, guitar


1. Prelude
2. Hydra
3. St. Geroge & The Dragon
4. Mama
5. Child's Anthem
6. I'll Supply The Love
7. Angela
8. 99
9.Tale Of A Man
10. Georgy Porgy
11. Rockmaker
12. Keyboard Solo〜 Guitar Solo
13. Girl Goodbye
14. Hold The Line
15. White Sisiter
16. Runaway
17. All Us Boys



(注1)ちょっと前まではFMラジオで放送された1時間弱の音源があるのみで
 ちなみに、この時のライブの様子が分かるものとしては、かつての東京12チャンネルで放送された『ステレオ音楽館』という番組もあったわけですが、勿論、その番組を録画していることもなく、この音源のみが私の心の支え(笑)であったわけです。

『World Tour』では更なるデータベースの拡充を図る為に、皆様からの投稿レポートを広く募集しております。新規の公演、又は既に掲載されているものと重複していても構いません。ご協力の程よろしくお願いします。


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