Jeff Mania JW's Column
キーマンはデヴィッド・ハンゲイト?
《 Hydra エンディング日別構成表 》
 キーマンはデヴィッド・ハンゲイト?... などと、とてつもなく大袈裟かつ大胆な見出しを付けてしまったこのコラム、何を語りたいのかと言いますと、時は1980年の春、初来日を果したTOTOの面々は、その凄まじいばかりのパワーと情熱を持ってして、鬼気迫るパフォーマンスを我々の目の前で見せつけてくれました。中でもショーのオープニングを飾った"Hydra"ではとりわけ一段と強い印象を与えてくれることに。何が凄いの、凄くないのって…細かい話はここでは割愛させていただきますが。んがぁ、とにかく! 彼等のぶったまげ級の演奏に酔いしれてしまった私なのです。それからというもの、この時のライブ音源を、とりわけこの"Hydra"という楽曲をいやというほど繰り返して聴きまくってきました。

 んがぁ、お恥ずかしいことについ最近までこの曲のエンディングにあたるギター・ソロのパート、いわゆる曲が最高潮に盛り上がる所ですが、この部分、ジェフのあまりにカッコいいなプレイに心を奪われるばかりで、その他の音が殆んど耳には入らなかったんです、今の今迄は (^^; で、ついついごく最近になり、もういい歳(老体)になったせいなのか、少しは冷静に曲の全体を見渡しながら聞けるようになったわけです。そこで…

   「んん? ここはこれだけジェフが好き放題に叩いてるんだけど、

                   デヴィッド・ハンゲイトはどう対応してるんだ?」

 と、今更ながら気になり始めたのです。近年になって、この1980年の来日公演は奇跡的に複数のブート音源が公表され、各公演の様子が容易に得られるようになりました。そのおかげでそれぞれの公演での演奏をも比較することが可能になったわけです。そこでちょっとその辺りのことを掘り下げてみようというのがこの項の主旨であります。まぁ、いつもの私の「妄想&戯言」みたいなものなのですが、ここまで読み進めていただいた方は与太話と思って最後までお付き合いください。

 さてそれで今回問題にしている "Hydra" のエンディング・パートですが、

 こんな感じのコード進行を繰り返し演奏しています。この最後の "D" にあたる部分がこの二人の見せ場なわけですね(笑) 右の表はこれらを踏まえた上で、全部で10回行なわれた公演のうちの3公演分の "Hydra" におけるエンディング構成を日別にまとめたものです。この表ではその "D" にあたる部分だけを抜き出して表記してみました。「たん」とか「どど」とかいう言葉の羅列で表記したものがこの部分でジェフがどんな風に演奏していたかを表現したつもりなのです。ご理解していただけますでしょうか(^^; Jeff's Worldにお集まりの皆さまなら、この難解な表現でも十分に想像してもらえるかな〜と、勝手に判断させてもらいますが…

 では話しを先に進めます。こうして各公演の演奏を並べて聞いてみて一番最初に気が付いたのがエンディング・パートの小節数、要するにこのコード進行パターンを繰り返す回数が日によって違っていたということです。表を作成するに当たりこれが分かった時にはちょっと意外な気がしてなりませんでした。これがレッド・ツェッペリンやらディープ・パープルのように(例えがちと旧いか(^^; ) 全編アドリブ・プレイのテンコ盛りぃ〜 みたいなバンドならいざ知らず、TOTOのようなアレンジ・構成がカッチりしているであろうバンドがその場の雰囲気でその構成なり、小節数を変えたりすることはあんまりしないんじゃないのかなぁ〜と思うからです。ですから、これはアドリブでそうなったというよりも、むしろ、ツアーが始まり、演奏回数を重ねたり、その間のリハーサルを通じて何かの都合で変えてきたと思う方が素直な考え方かなと思います。とは言うものの、5日の演奏自体、曲の終わり方がどうも不自然な感じを否めないという気もしているので、もしかするとですが、単にジェフが曲の構成を間違えて勝手に終わりにしてしまった可能性もなくはないのですが…(^^; 勿論、全ての公演を聞き比べたわけではないので、これはあくまで私の推測の域を脱しはしませんが。

 問題の二人の演奏についてですが、有難いことに毎日違ったパターンでフィル・インを繰り出していますので、これはその都度のフィーリングでこれらをこなしていたようですね。ここでやっとデヴィッド・ハンゲイトの話しとなるわけです(笑) それでですね、手持ちの音源を良〜く聴いてみるとですね、必ずしも毎回というわけではありませんがジェフの繰り出すフィル・インとデヴィッド・ハンゲイトのベース・ラインとがぴっちりとフレーズを合わせているところが複数回以上あります。まぁ、こういう風にドラムのフィル・インとベースのフレーズを合わせるというのはバンド演奏としては定石なわけですが、そういう点に気が付くと、元&旧バンド・マンであった私にとりましては、今更ながらではありますが、改めての感動の渦がふつふつと沸き起こって来ちゃいます(笑)

           「あ〜ぁ なんで今の今まで気が付かなかったんだよぉ〜」

 という自嘲的な悲しみもあるわけですが、それは横に置いといて… 毎回違った演奏をしている割にはよくピッタリと息が合うもんだな〜などと思いつつ、更に、更に聞き込んでみることで一つの仮説に辿り着きました (笑)

   「エンディング・パートでの指令はデヴィッド・ハンゲイトから出されているのではないか?

       もしくはジェフがデヴィッド・ハンゲイトのフレーズに合わせているのでは?」

 ということです。まぁ殆どの方にとってど〜でもいいことがこのコラムの主旨なのです (爆) こんなことは、もう気が付いていた人はとっくにご存知のことだったんだと思いますが、やっと今になって気が付いた自分が嬉しくて嬉しくて堪らなかったのであえてテキストにしてみました〜(^^; もう20年近くの間これらを聞き続けていたわけですから、もっと早く気が付けよ…と思われてしまいそうですが。

 そうなんですよ。ピッタリと二人のフレーズが合った時はほぼデヴィッド・ハンゲイトのフィル・イン・フレーズが、ジェフよりも先に始まっているんですよ。そしてあたかもジェフがそのフレーズに呼応するかのごとくにフィル・インを重ねているように聞こえてくるのです。勿論私の耳にはですが (爆) リハーサルの時にジェフが「デヴィッド、ここで何か適当なフレーズ弾いてみてよ、それに合わせるから」みたいな会話があったのかと、想像力を逞しくして喜んでいるわけですが。

 で、検証する前のおさらいとしてスタジオ版での演奏はどうなってるんだ? と、参考までに聞きなおしてみますと…合わせている言えば、そうでもあるし…適当といえば適当だし。まぁ演奏自体が派手なことをしてませんので、あまり参考になりませんね。それにテンポアップする一番美味しくなる前ではあえなくフェイド・アウトが始まってしまいますから...。

 話を日本公演に戻しましょう。音源の性質上5日の演奏では細かいフレーズが聞き取りにくくて、実際にデヴィッド・ハンゲイトがどんなフレーズを弾いているのか殆んど判別が付かないというのが実情なのですが、それでも無理矢理に解析してみるとジェフと合わせようと意図したフレーズを弾いているようには聞こえてきません。故にこの日の演奏はジェフが黙々とフィル・インを叩いているという印象が残り、ジェフとデヴィッド・ハンゲイトの二人がフレーズを積極的に合わようという約束ごとはないようです。

 ところが一転、間に数回の公演を挟んだ後の12日の演奏となると、まるで打って変わったような濃い〜い演奏となり、デヴィッド・ハンゲイトがバシバシと、アドリブ・フレーズを連発しているのです。この日は「東京での公演である」、「テレビの中継録画がある」というような、彼らが張り切って演奏をするという別の要素もあったと思います。これはTOTOというバンドに限らないと思いますが、よっさんの『運命の出会い』にも記述があったように5日の時点でのショウは東京でのライブに向けての「リハーサル的な要素を持ち合わせていたショウ」だったという解釈もあるのかもしれませんね...ちょっと深読み過ぎるかもしれませんが(^^;
 そして日本公演最終日に当たる13日の演奏でも12日の熱演を反復するがごとく、デヴィッド・ハンゲイトの繰り出すフィル・インにジェフは呼応し続けたわけです。

 バンドとして、はたまた二人の間でどのようなやりとりがあったのかまでは見当が付きませんが、単純に音源だけを聞いていると、デヴィッド・ハンゲイトが "振り"を出して、ジェフがそれに"呼応" するというスタイルで演奏されているように聞こえてならないわけです。それともう一つ拘って聞いてみると、エンディング・パートは一度テンポがアップした後で、再度、元のゆったりとしたテンポに戻るわけですが、5日、12日の演奏では、最後の4小節だけが、スローなテンポに戻った後で再びテンポ・アップしてから演奏を終えています。この辺りはジェフの気分の問題かな?

 後は一覧表を見てもらって皆さんにご判断をしていただくしかないわけですが。もし同種の音源をお持ちの方はぜひともこの表と取らし合わせながら、もう一度じっくりとこの "Hydra" を聞き直してみて下さい。新たな発見があるかもしれません。またこの一覧表以外の公演の様子がお分かりになる方はぜひともその様子を教えて下さい。

 と、まぁ、長いテキストの割には中身のないコラムでした(^^; 私の妄想にお付き合いいただきましてありがとうございました。 お終い。

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(注) ■ハンゲイト(○) --> ジェフ(○) デヴィッド・ハンゲイトからジェフへ合図を送っているか、どうかを表します。
  左行はエンディングのコード進行パターンの繰り返し回数を示します。
5日 12日 13日
ギターソロ開始

1


「タ・ど・ど、タ・ど・ど、ジャ〜ン」スネアー、バス・ドラム、シンバルのコンビネーション

「タカ・ドコ・どど、ダカ・ドコ・ダダ、タン」の六連タム・タム流し。

タム・タム、バス・ドラムによるコンビネーションプレイ風3連タム・タム流し


■ハンゲイト(?) -->ジェフ(?)

■ハンゲイト(×) --> ジェフ(×)
ここではデヴィッド・ハンゲイトの指示はないものの、結果的には二人のフィル・インに合わせられています…。


■ハンゲイト(×) --> ジェフ(×)

2


シンバル・ワーク

シンバルとタム・タムを組み合わせた6連フレーズ。

「タ・ど・ど、タ・ど・ど、ジャ〜ン」スネアー、バス・ドラム、シンバルのコンビネーション


■ハンゲイト(?) -> ジェフ(?)


■ハンゲイト(×) -> ジェフ(×)
ここではデヴィッド・ハンゲイトの指示はないものの、結果的には二人のフィル・インに合わせられています...。


■ハンゲイト(×) -> ジェフ(×)
ここではデヴィッド・ハンゲイトの指示はないものの、結果的には二人のフィル・インに合わせられています。


3


フロア・タム、シンバルのコンビネーション

タム・タム、バス・ドラムのコンビネーション・プレイ風3連タム・タム流し

「タカ・ドコ・どど、ダカ・ドコ・ダダ、ダン」の六連タム・タム流し


■ハンゲイト(?) -> ジェフ(?)

■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ


■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ

4


スネアーの16分フレーズ

シンバル・ワーク

「タカ、シャ〜ン、タカ、シャ〜ン、タカ、シャ〜ン」スネアー、シンバル・ワーク


■ハンゲイト(?) -> ジェフ(?)

■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ


■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ

5


タム流し

スネアーの16分フレーズ

この日は何故か繰返す回数が少ない
■ハンゲイト(○) -> ジェフ呼応(○)

お見事! ドンピシャ


■ハンゲイト(×) -> ジェフ(×)

テンポアップ

6


「ん・タン、タ・ドゥドゥ・タン、ん・タン、タ・ドゥドゥ・タン」

「ん・タン、タ・ドゥドゥ・タン、ん・タン、タ・ドゥドゥ・タン」

「ん・タン、タ・ドゥドゥ・タン、ん・タン、タっ・タラ、タっ・タラ、タっ・タラ」



■ハンゲイト(?) -> ジェフ(?)

■ハンゲイト(○) -> ジェフ(×)
デヴィッド・ハンゲイトが振りを出すもジェフは無視(^^;


■ハンゲイト指示 -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ

7


「ん・タン、タ・ドゥドゥ・タン、ん・タン、タっ・タラ、タっ・タラ、タっ・タラ」

「タ・ど・ど、タ・ど・ど、ジャ〜ン」スネアー、バス・ドラム、シンバルのコンビネーション

「ん・タン、タ・ドゥドゥ・タン、ん・タン、タっ・タラ、タっ・タラ、タっ・タラ」


■ハンゲイト(?) -> ジェフ(?)

■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ

■ハンゲイト(○) -> ジェフ(×)
デヴィッド・ハンゲイトが振りを出すもジェフは無視(^^;


8


「ん・タン、タ・ドゥドゥ・タン、ん・タン、タっ・タラ、タっ・タラ、タっ・タラ」

「タ・ど・ど、タ・ど・ど、ジャ〜ン」スネアー、バス・ドラム、シンバルのコンビネーション

「タ・ど・ど、タ・ど・ど、ジャ〜ン」スネアー、バス・ドラム、シンバルのコンビネーション


■ハンゲイト(?) -> ジェフ(?)

■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ


■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ

9

この日は何故か繰返す回数が少ない
タム流し

■ハンゲイト(×) -> ジェフ(×)


2拍3連風タム流し

■ハンゲイト(×) -> ジェフ(×)


元のテンポに戻る

10


シンバル・ワーク


タム・タムの3連風フィル


「タ・どど、タ・どど、ジャ〜ン」スネアー、バス・ドラム、シンバルのコンビネーション


■ハンゲイト(?) -> ジェフ(?)


■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
ジェフも合わせているようですが、何故か中途半端 ミスった?


■ハンゲイト(○) -> ジェフ(○)
お見事! ドンピシャ

エンド締めフレーズ


〜 追加テキスト 〜

 とまぁ、なんの根拠も示さずに思いっきり私の妄想で展開したこのコラムですが、な、なんと驚くべき新証言が『Guest Book』上で飛び出しましたので、こちらに追加しておきます。
●Hydraのエンディング考察  投稿者: こっひ - No.737 2009/03/08(Sun) 18:55:59

Hydraのエンディング考察、楽しく拝見させて頂きました。
僕は9日、夜の部と11日を見たのですが、本番直前までこのエンディングの練習をしていたのを憶えています。

サンプラザは階段の前までは入場前でもうろうろする事が出来ますのでリハの音がよく聞こえてきます。
完璧な演奏でしたので最初はPAのテストでもしているのかと思いましたが例のエンディングでリハと判断出来ました。

入場すると左右にセットされたポリフュージョンの大型シンセモジュールのLEDの光が左右に流れていて非常に興奮したのを憶えています。
 とんでもない証言が飛び出しました。ほとんどが私の妄想満載で書いたコラムなわけですが、図星とまでは行かないまでもジェフ達も"Hydra"のエンディングに関してはかなりナーバスになっていたということが想像できますね。TOTOという言わば伴奏のプロフェッショナルなバンドといえどもこういった形の演奏にはなにか引っ掛るモノがあったのかもしれません。
例えば、「大阪での初日公演のようなダラダラした雰囲気の演奏を当人達が解消したかった」とか、「予想外のライブ・レコーディング(差替え不可の一発録音)をすることとなりエンディングの練習をしたいた」とか。またまたいろいろと妄想したくなります。

 しかし、あれから約30年が経過するというのに、こうした新たな新事実が分かるというのは本当に素晴らしいです。こういうのをお待ちしておりました。ほんと ♪こっひ 様、貴重な情報をありがとうございます。