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1981
kouしてジェフはロサンゼルスの音楽業界で着々とその知名度を上げていくことになります。プロデューサーであるジャック・ドーティーもジェフのプレイに熱心に耳を傾けるようになったうちの一人でした。1971年ジェフがドンテスでのハロウィン・パーティでプレイしていた時、A&Mのプロデューサーであるジュルス・チェイキンが子供を連れてそのパーティにやって来ていました。
(写真1) 若干17歳のジェフ・ポーカロ
ダサい、田舎の兄ちゃんっていう風情ですけど!
 「あの日の演奏が終わった後で彼が僕に "A&Mで日曜日にやってるリハーサルで一緒にやってみないか?" って言ってきたんだ。それがジャック・ドーティのビッグ・バンドだった。ジャックはカーペンターズのプロデューサーだったんだ。その頃のレギュラー・ドラマーはハル・ブレインだったんだけど、僕の記憶が正しければ、彼はツアーに出てたんだと思うよ。僕はその頃はろくに譜面も読めなかったんだけど、とにかくやりますって答えたんだ」とジェフ。
 そしてこれがきっかけとなり、初の本格的なセッションの仕事へと繋がって行くのです。その仕事の頃はジェフがほんの17歳になったばかりで、しかも憧れのジム・ケルトナーと一緒というおまけ付きでした。
 再びジェフの言葉を借りると. . . 。
 「しばらく、彼らのリハーサルに通っていたんだけど、そのうち呼ばれなくなってしまっんだ。彼らがレコーディングする計画を持っていたのは知ってたから...、いよいよ始めるのかなと思ってた。で、ある日ドーティーに呼び出されて行ってみると "ドラマーのケルトナーを知ってるかい?" って...、知ってるなんてもんじゃないよ、何て言ってもその頃の僕の最大のヒーローといったらジム・ケルトナーとジム・ゴードンの二人だったんだからね。 "勿論 知ってます" って答えた。 "実はケルトナーは今ジョー・コッカーとツアーに出てるんだけど、それが終わったら彼と二人でツイン・ドラムを組んでもらいたいんだ" ってさ。まだ17歳だったから車の免許証も持ってなくてね、だから母がセッションの度にA&Mのスタジオまで送ってくれたんだ。ドラムは父のブラック・パールのセットを借りていったな。そのセットはまるでケルトナーのやつみたいでね。何故って、その頃の僕はまさに彼のようになりたかったからさ。ケルトナーみたいなベストを着て、出来る限り重いブーツを履いてたんだ。

(注1) 憧れのジム・ケルトナー
 ケルトナーと初めてのセッションの日、スタジオのドアを開ける手が震えてたのを覚えてるよ。そしてジムが僕の隣に座って、見下ろすように話かけて来たんだ。"なあ、君は譜面読めるかい?" 、僕がいいえって答えると、"実は俺も似たようなもんなんだよ、俺はリズムを刻むから、君がフィルを入れてくれ" だって。これがジムとの出会いだよ」。

 なんとも数奇な巡り合わせではないですか! ジェフは自分はラッキーだったといつも言ってましたが、本当にその通りなのかもしれません。しかし運も実力の内とはよく言ったもので、このチャンスの巡り合わせもジェフの実力の賜物と言って差し支えないですよね。

 一方のジム・ケルトナーはこの時の様子をこんな風に語っています。
 「ジェフと初めて会ったのは彼が17歳になる頃、3月31日ジャック・ドーティーとのセッションの時だったね。ジャックのビッグ・バンドで俺達はツイン・ドラムを組むことになったんだ。最初にジェフを見た時の印象は、ずっと本当の年齢より大人っぽく見えたし、それに大変な自信家のように見えたよ。俺がドラムをセットアップしてると、ヤツは手慣らしを叩き始めたんだ。それを聞いた時はドキッとしたよ。滑らかに流れるようなフレーズに、力強いサウンド。俺が "今やったのもう一度出来るかい?" って言ったら、なんと彼はもう一度そっくり同じフレーズを叩いたんだ。自分がどんなプレイしているか、ちゃんと把握しながら叩いてるんだよ。どこでそんなプレイを覚えたんだ" って聞くと "お父さんのジョーから" って。彼はその頃自分のドラムも持っていなくて、足もまともにペダルに届いていなような感じだったね。ジェフはそれからこんなことも話してくれたよ。 "スタジオで働いている人たちは皆僕のプレイは手数が多し、音がデカ過ぎるって" 。だから俺はこう言ってやったんだ、 "ジェフ、君はまだ若いんだ。もし自分のプレイを見つめ直そうと思えばいくらでも後で時間があるさ。だから今は自分の思った通り、感じたとおりにプレイしてごらんよ" ってね。その時から俺はジェフのことを自分の弟のように思うようになったんだ」。





(注2) Jack Dougherty & The Class Of The Nineteen Hundred And Seventeen One
 結局このリハーサルが後に『Jack Dougherty & The Class Of The Nineteen Hundred And Seventeen One』 (注2) というアルバムとしてリリースされることになります。このアルバムは上記の写真を見てもれえば分かるようにまだまだ少年といった風情のジェフが初めて正式に行ったなセッション・ワークと言われております。アルバムを聴く前は単なる記念碑的なものでは?と思っていたのですが、いやいや、そのプレイ内容といったらまさしくぶっ飛びます。既にこのアルバムを聴いていらっしゃる方ならご存じのように、これがホントに17歳の少年のプレイなのか?と言いたくなる程既に完成したスタイルでプレイをしているのです。詳しくはこちらのコーナーに感想を載せましたので合わせて参照してみて下さい。ホントに凄いんです!
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