〜『ライブ・イン・パリス』のハイ・ハットを求めて〜


 カタログと照らし合わすため、先ずは、『ライブ・イン・パリス』映像の確認。


 メールのやり取りにも出てきますが、正直、ハイハットがザ・パイステ・ラインじゃなさそうだってことに気づき、改めて衝撃を受けました。今まで、疑うことなくザ・パイステ・ラインと思ってましたから…

 そして、ご指摘のロゴマークを探す。

 多分、これかなぁ?


 右から伸びる黒い細い影先端辺りに、なんとなく見えるロゴマーク。確かに、サウンド・フォーミュラのように丸いロゴのように見えるかなぁ?

 カタログに掲載のサウンド・フォーミュラのロゴはこちら!

 実際のシンバルには黒字で印刷されてます。
 因みに1995年のカタログでは、ロゴがこちらに変わってます。

 パラパラとカタログをめくり他のラインナップを見てると、なんとパイステにはサウンド・クリエーションなるシリーズがあるんです。
 そのロゴがこちら。



 そうなんです、非常に良く似てるんです…そして、上のライド写真見て驚きました!
私が探し求めていた『ライブ・イン・パリス』の時のライドに打痕?が似てる気がするんです。まさか、サウンド・クリエーションだったのか?


 おっと、話が脱線しそうなのでハイハットに戻ります。種類による違いがあるかもしれませんが、カタログで確認できるサウンド・クリエーションのハイハット写真だと、どうも打痕が違うような感じ。


 う〜ん、そろそろカタログ写真だけだと、限界を感じたので、ここは一度インタビューをプリント・アウトしたものに目を通して見ることにしました。

(1) Rolling Stone, February 22, 1979
「For Porcaro, cymbals cause the most frustration.“A cymbal sounds better with age. All the new cymbals sound like clanks.” Though he uses the older A and K Zildjians, Porcaro laments, “I wish there were more opportunity to fine old cymbals that the drummers in the Thirties had.”」

(2) Modern Drummer, February 1983
「He is endorsing Paiste, using two 21” 2002 crashes, a 20" 2002 carsh, a 19" 2002 carsh, a 22" 2002 ride, a 22" 2002 China, a 8" 2002 bell and 14” 2002 heavy hi-hats.」
(『ドラム・ブラザー』訳)
「シンバルで彼がエンドースしているのはパイステだ。21" の2002クラッシュ2枚、20" の2002クラッシュ、19" の2002クラッシュ、22" の2002 ライド、22" の2002チャイナ、8" の2002ベル、そして14" 、2002のヘヴィ・ハイハットである。」

(3) Modern Drummer, July 1986
「The cymbals were all Paiste, and included a 20" Formula 602 ride, 18", 19" and 20" 2002 crashes, a 16" Formula 602 crash, and 14" Formula 602 hi-hats. Basically, I used the same setup for Isolation and I also use it live. I will add or subtract a drum here and there, and lately I’ve been new 3000 series.」

(4) Modern Drummer, November 1988
By Robyn Flans :
「I know you endorse Paiste cymbals. What hi-hats do you favor, since that’s one of your trademarks?」
Jeff Porcaro :
「I have several pairs I like. I have a pair of 602 Paistes that I’m in love with. I have a pair of 13" Zildjians -a Z on the bottom and a K on top. One of my favorite pairs is an old, old, old A Zildjian 14" on top and an Italian Tosco on the bottom that on each north, south, east, and west point on the bottom cymbal. They’re incredible. This Tosco is real thick, but very brittle  not a lot of harmonics on the bottom. That combination worked out great. I got the Tosco cymbal when I was in Italy with Toto.」
(『ドラム・ブラザー』)
―シンバルは? あなたのプレイの特徴の一つでもあるハイハットは何が好きですか?
「いくつかあって、まず602パイステがとても気に入っている。ジルジャンの13”、Zがボトム、Kがトップのセットも持っている。それからうんと古いAジルジャン14”をトップに、イタリア製のトスコのボトムを組み合わせたもの。このトスコのボトムには、ベルの周りに1/4”の穴を4つ開けて東西南北の位置にリベットを2組打ち込んである。これはとても厚くてもろいが、ボトムのハーモニクスはあまりない。この組み合わせはとてもうまくいったと思う。」

(5) DRUM! November / December 1991
Porcaro’s Power Tools
Cymbals: Paiste Signature Series
A. 14" hi-hats
B. 10" cup chime
C. 6" cup chime
D. 18" crash
E. 16" crash
F. 20" ride
G. 17" crash
H. 20" Wuhan China-type

■口その悩ましいセッティング図
 なんと、123ページもあって情報5つ…英語が分からない上に、あまりにも情報が少ないため、同時に出土した、来る日も来る日も眺めていた悩ましいセッテイング図がある3月16日を見ることに…
 しかし、シンバルの記述を目にした瞬間、なんとも、凄い違和感を感じる自分がありました。
私、今回気付きました! よくよく見ると、「THE PAISTE LINE Signature」じゃなく、「Paiste Cymbals Signature Series」としか書かれてないんですよ。インタビュー記事(5) 1991年の使用機材にも「Paiste Signature Series」と記述。えっ?それなら、なぜ、当時「ザ・パイステ・ライン」と思ったんだろうか? 私もそうだったし、多分、少なからず、この悩ましいセッティング図の影響で何人かは、「ザ・パイステ・ライン」と思い込んだ方がいらっしゃるのではないでしょうか?

 何故か? その一因は、原因はシンバルの種類の書き方が、当時の「ザ・パイステ・ライン」に合致してるんです。

Paiste Cymbals Signature Series
1- Heavy Hit-Hat 13" (あえて、表記通りのHit-Hatにしました。本来はHi-Hat。)
2- Splash 10"
3- Full Crash 16"
4- Mellow Crash 18"
5- Full Ride 20"
6- Full Crash 18"
7- Fine Crash 22" or China 20"

 上記のように、シンバルが紹介されてます。ここで、私の手持ちカタログで、ザ・パイステ・ラインが最初に確認できる1989年を参照すると、Heavy Hit-Hatは、ザ・パイステ・ライン、2002、3000、2000 リフレクター、フォーミュラ 602にラインナップ。Splashは、ザ・パイステ・ライン、2002、3000、300 ルード、2000 リフレクター、1000 ルード、200、フォーミュラ 602にラインナップ。Full Crashは、ザ・パイステ・ライン。1992年カタログのサウンド・フォーミュラからラインナップ。Mellow Crashは、ザ・パイステ・ライン固有のもの。Full Rideは、ザ・パイステ・ライン。1992年カタログのサウンド・フォーミュラ・アルファからラインナップ。Fine Crashは、パイステのカタログに該当シンバル無。Chinaは、2002 (China Typeと明記)、3000、3000 ルード、2000 リフレクター、1000 ルード、200、フォーミュラ 602 (China Typeと明記)にラインナップ。参考までにザ・パイステ・ラインは、ヘビー・チャイナ、シン・チャイナの2機種。インチ数も今から思えば怪しいとこもあり、パイステのカタログにも掲載されてないシンバルもあるんですが、固有のラインナップが数多く該当してるのと、後に、ザ・パイステ・ラインに手持ちカタログだと2002年からシグネチャーが表記されだしてるのとでごっちゃになったのか?
 もう、何が先で何が後かも定かではありませんが、とにかく、少なくとも私の中では、
パイステ・シンバルズ・シグネチャー・シリーズ=ザ・パイステ・ラインの方程式が出来上がったようです。それというのも、当時の心境が…、
「もし、ジェフが生きていたら、こんなドラムやシンバルを叩いていたのかも…」と、もう聞くことも見ることもできない進化したであろうジェフ。そこから、未来のジェフ像を自分なりに創造した結果、この悩ましいセッティング図が、私に破壊的威力となって所有&購入欲の原動力と化したんです… まあ、タイミング的にも、ジェフがプロトタイプ風のシンバルを『教則ビデオ』で、
「何、使ってんだ?」と思わせておいて? タイミング良くザ・パイステ・ラインが発売になったので、もしや、ザ・パイステ・ラインの原型では?と結びつけることには、使用機材が欲しいというファン心理からすると何のためらいもなかったのかも…

 この3月16日には、もう少しジェフのキット紹介がありますが、今回はシンバルのみをご紹介にします。

TOTO TOUR 1982
Paiste 2002 Cymbals
●14" Heavy Hi Hats
●19" Crash
●21" Crash
●22" Ride
●19" Crash
●20" China Type

TOTO TOUR 1987
Paiste Cymbals
●14" Heavy Hi Hat Formula 602
●8" Bell 2002
●10" Splash 2002
●19" Medium 2000
●18" Crash 2002
●8" Splash
●20" Medium Ride Formula 602
●18" Power Crash
●19" Crash 2002

Jeff Porcaro Drum Set 1989
Paiste Cymbals
●14" Heavy Hi Hat Formula 602
●16" Crash 3000
●10" Splash 505
●20" Heavy Crash 2002
●7" Cup-Chime 200
●18" Power Crash 3000
●20" Medium Ride Formula 602
●16" Crash 2000 Sound Reflections
●20" China Type 2002

 すでに言いましたが、3月16日か3月23日か、TOTO-Officialか、どこが出所か不明ですが、多少の修正はあるものの、シンバルはすべて同じ表記でした。

 もう一つインタビューと言えば、『ドラム・ブラザー』誌がありました。
リズム&ドラムマガジンNo.11 (1985年夏号)より
―スタジオでも、同じシンバルを使ってますか?
「基本的にはね。」
―シンバルは大きめのを使ってるみたいですが。
「そうだね。パイステ・クラッシュの18" 、19" 、20" を使っている。ライブでは2002シリーズ、スタジオでは602シリーズに、プロトタイプも使っているよ。」

 随分、『ライブ・イン・パリス』から脱線しましたが、この様にして次々と深みにはまっていったんですよ、今回。最初、サラーッと、「ザ・パイステ・ラインでしょ!」と言って終わるはずだったんです…
はい! ここで落ち込むわけにはいきませんので、再び、捜索に戻りましょう。

■口『教則ビデオ』に付属していたセッティング図
 ♪次に取りい出だしたるセッティング図は〜?
『教則ビデオ』に付属してるものにございます…ドドン・ドン・ドン・ドン♪ (笑)

PAISTE CYMBALS
A+B -8" and 6" CUP CHIMES
C-18" CRASH
D-16" CRASH
E-20" MEDIUM 602 RIDE
F-18" CRASH
G-14" 601 HI HATS

 補正修正するとすれば、ビデオでも確認出来ると思いますが、
A+B-8" and 6" CUP CHIMESは2002
F-18" CRASHは 2002
G-14" 602 HI HATS
です。が、今回の疑問には直接関係ありませんが、クラッシュが、納得いかないんですよね。どうも、プロトタイプに思えて仕方ないんですよ…
写真をご覧ください。


 写真の1枚目&2枚目のシンバル表にある黒字ロゴ、3枚目のシンバル裏にある黒字ロゴ。『教則ビデオ』は1989年(収録は1988年)発売だったはず。裏の黒字大きめ「PAISTE」ロゴはザ・パイステ・ラインがそうだったので分からないでもないんですが、問題は表の小さめの「PAISTE」に、多分「CRASH 16"」のように、サイズと種類を印刷してると思われますが、当時発売のラインナップには、この様な表記で表に印刷していたシンバルは無かったと記憶してます。その辺りを思いめぐらすと、当然、 (1985年のインタビューでも出てきました!)プロトタイプ (量産モデルに発展させることが前提、ないし、少なくともそのつもりがある)やシグネチャー (その分野で有名な人物の名を冠して売られる商品)の言葉が頭から離れなくなりますね。

 残るセッティング図と言えば、パールの『fill-in』誌と『PEARLADIDDL』誌です。『ON DRUMS』誌には追悼号として、キットの総集編が掲載されてます。後に、『ドラム・ブラザー』にも引用されてます。

■口[fill-in Vol.35 1985]
■口[fill-in Vol.18 1982]


■口[PEARLADIDDLE Vol.11 1988]
■口[ON DRUMS Vol.2 1993]

 おおおっと、もう一つ忘れてます!
 あの、謎のリハ映像です。

 先ずは、ジェフから見た2枚。


 ハイハットとスネアと10" + 12"のタムタム。


 前から見た、ジェフ左手側のクラッシュ2枚。


 前から見た、ジェフ右手側のライドとクラッシュ。


 ジェフ左手側後方からの3枚。


 ジェフ全開! (笑)


 全体の印象として、スタジオの照明のせいか、『教則ビデオ』の時より磨きあげているのか!?(笑) 私には、シンバル表と裏の色や質感が、フォーミュラ 602とも2002とも違うかなぁ? 裏ロゴ黒字とも相まって、どうも全シンバルが同じ種類のザ・パイステ・ラインっぽく見えます。ライドは、相変わらず、毎度おなじみ判断不明のものみたいですが…ハイハットは、スネアやタムタムとの感じから14"、ライドは20" みたいですね。
 でも、クラッシュ3枚は『教則ビデオ』の時よりインチが少し大きいようにも感じますね…特に、ジェフ右手奥のクラッシュは『教則ビデオ』では赤字18" 2002のようですが、このスタジオではサイズも大きい感じで、しかもシンバル裏ロゴは黒字かなぁ。
 ジェフ左手側のクラッシュ2枚も、『教則ビデオ』では16" 、18" になってますが、やはり18" 以上ありそうで、少し大きい感じがします。
 5枚目の写真には、ジェフの後方に予備の大きめサイズのシンバルも写り込んでますね、今回気付きました。しかし、残念ながら判別に至るシンバル表の溝や打痕やロゴが、まったく確認出来ないです。
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