
『私は10歳の時にスティックを握り、'70年代はドラム漬けの日々でした。そして '70年代の後半は正にリアルタイムで体験しましのでドラムのセッティングについていくつか私の知っていることがありますので、お話ししたいと思います。
まず、シングル・ヘッドのタム・タムについてです。これは、コンサート・タムとかメロディック・タム(日本ではこれを略してメロタムと呼ぶことが多いです)と呼ばれているもので、ラディック社が「オクタプラス」という名称で発売したものがオリジナルのようです。口径が 6"、8"、10"、12"、13"、14"、15"、16" インチの、8種類のシングル・ヘッドのタムタムを、2個ずつ独立したラック・スタンドでズラッと並べて使うものです。当時はCS系のドット付ヘッドを使うことが普通でした。'60年代から'70年代に活躍したL.A.の名セッション・ドラマー、ハル・ブレインが使ったことで有名になったようです。ジェフのように、通常のツインタムのキットに、何個かだけ組み合わせて使うドラマーもとても多かったと思います。
'70年代の初めにカーペンターズが来日した時に、ラディック社製のビスタライト(アクリル胴)のキットを使っていましたが、この時に使われていたのがオクタプラスです。これは音数が多くてド派手かつゴージャスなフィルインができ、当時としては画期的でしたから大流行しました。今の多点セットの原点ともいえる物だと思います。カーペンターズのCD「ライブ・イン・ジャパン」を聴くと、上から下まで叩きまくられてます(笑) 海外メーカーをよくマネしていたパール社は、「エイトブラザース」、ヤマハ社は「エイトタム」という類似品を発売しました。
また、この当時は、バス・ドラムもシングル・ヘッドで使うことが多かったのですが、'70年代後半は、バス・ドラムは毛布で残響をミュートして使うことが普通で、サウンド的にフロント・ヘッドを使う意味はあまりありませんでした。しかし、フロント・ヘッドを抜いて使っていると、タムタムの重みでバス・ドラムのシェルが曲がってくるので、それを嫌ってフロントに穴を開けたヘッドを使うようになりました。その後、バスドラムの音も、もっと「鳴り」を重視するようになり、シェルの深さや、フロント・ヘッドのホールカットの大きさ、ミュートの方法なども変化して行きます。
'70年前半は毛布ミュート以外にも、「帯ミュート」という、幅10センチくらいのフェルト布の帯をヘッドとシェルの間に挟んでミュートする方法や、トーン・コントロールという、インターナル・ミュート(内蔵ミュート)を使っているドラマーが多かったです。もっとも、バスドラムには、インターナル・ミュートが付いていないメーカーの方が多かったのですが・・・。しかし、'70年代のイギリスのハード・ロック・ドラマーにも、フロントヘッドを貼っているドラマーも多くいましたので、上記のことが全てに当てはまるわけではありません。
また、10" インチのタムタムは、'70年代の中頃からスティーブ・ガッドというドラマーが一世を風靡し、この人がスタジオワークやN.Y.のクラブで、パールの10インチのコンサート・タムを改造してダブル・ヘッドにして使っていたようです。その後、スティーブ・ガッドはヤマハとエンドースメント契約をし、ヤマハが10" インチのタムタムを最初に商品化しました。その頃から、タムタムはボトムヘッド付が普通になりました。'76年に村上ポンタ秀一氏が使っていた、ヤマハのプロトタイプのキットには小口径のタムタムが使われていました。タムタムは、シングルヘッドよりも、ダブルヘッドの方が鳴りや音色をより細微にチューニング出来ます。シングル・ヘッドの場合だと、単にドーンと鳴ってるだけですが、ダブル・ヘッドだと、ボトムの張り具合で音色も変わって来ますし、シェルの材質による音の違いも明確に出て来ます』。
いろいろと疑問に思っていたことがこれでやっと合点が行きました。それしても10" インチのタムタムの元祖はスティーブ・ガッドであり、それがヤマハ社製だったとは......筆者はドラム素人らしく、勝手にジェフが元祖などと思っておりましたが(^^; いや、本当にNG様、貴重な情報をありがとうございます。こうやって少しずつ歴史がひも解かれて行くわけですが、皆さんのご協力は本当にありがとうございます。
ネットで検索したところ幸運にもジェフの使用していたものと同型・同色と思われるオクタプラスを発見出来たので参考までに掲載します。オークションに出品されていたのです。かなり古ぼけた感じはありますが......。
で、上記で紹介されておりますオクタプラスを叩きまくっているというカーペンターズの「ライブ・イン・ジャパン」を早速入手して聴いてみました......いや、NG様が仰る通りに一曲目の "Super Star" から叩きまくってますね(笑) 「えっ、こんなにやちゃっていいの〜」っていう位に上から下まで満遍なくですね。カーペンターズというので、もっと大人しく、と思っていたのですが、ちょっと意外でした。まぁ、目の前にズラリとタムが並んでいるわけですから叩きたくなるのが人情と思いますので(^^; 勿論ちゃんとツボを抑えたドラミングがされているのは言うまでもありませんので、アルバム全体の演奏は申し分ない仕上がりです。そしてカレン・カーペンターの素晴らしい歌声とグループとしてのカーペンターズの良さを再認識させられました。
しかし、このアルバムというか、ライブですが、途中に挟まれるM.C.と素晴らしい楽曲群との兼ね合いからか、まるでディズニーランドのアトラクションに参加している雰囲気になりますよね。いや、本当にいいアルバムでよく出来ていると思います。お勧めです! ちなみにですが、上記のものとは別のライブと思いますが、たまたまカーペンターズのライブ映像を見る機会があったのですが、その時も2台のヴィスタライト(オクラプラス仕様)がセットアップされていましたね(一台は当然カレンのもの)。
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