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Steely Dan Pretzel Logic
 スティーリー・ダンとしては通算で三枚目のアルバムであり、ジェフが彼らと活動を共にするきっかけともなったアルバムでもあります。ジェフが参加したのは (2)Night By Night(6) Parker's Band の二曲で、いずれの曲も仕上がりは秀逸であり、アルバムの中で重要な役割を果たしています。
 この時期のスティーリー・ダンはまだ商業ベースにのとった活動をしており、後年の彼らのように好きな時期にアルバムをリリースするというわけにはいかず、ある程度の一定期間で仕上げることが要求されているようでした。。ゆえに収録された曲は新たに書き下ろされたものと過去においてボツになっていた曲を寄せ集めたものとなっています。そのせいかどうかは別として全体を通じての仕上がり感は今一つ盛り上がりに欠けるところもあります。しかし (1) Rikki Don't Lose That Number のような大ヒット曲も含まれている他、カントリー・タッチの曲やスティーリー・ダンらしからぬ佳作など、バラエティに富んでおり、私としては結構楽しめるアルバムでもあります。
 そしてもう一点このアルバムにおける重要な要素は、このアルバムから始まった例の『ワークショップ形式』というやつです。まぁ、この辺りの経緯については『Historical View』の方にまとめてあるのでそちらを参照して頂くとして、この『ワークショップ形式』の余波によりドラマーのジム・ホッダーなどは一部の楽曲でバック・コーラスとして参加するのみでドラムは全くプレイさせて貰えず、ギターリストのジェフ・バクスターですらソロをオーバー・ダブする時のみに呼ばれるといった有様で、とてもアルバム作りに参加したとはいえない状態でした。それから類推すれば当時のバンド内は相当険悪な状態だったのではないかと思うのですが、なんと彼らはこのアルバム・リリース後には律儀にもワールド・ツアーを敢行してました (皮肉にもこのワールドツアー大成功になるわけですが)。
 それと誰もが不思議に思っていると思うのですが、例の邦題としてつけられている『さわやか革命』というタイトルは一体どういう意味合いだったのでしょうか? 私などはこの邦題と意味不明なモノクロ・ジャケットのせいでこのアルバムには全く手を出す気になれなかったのでした (今思うとそれは大きな間違いだったわけですが)。実の所ベスト盤などを通してアルバム中の曲は知っておりましたが、2000年にリリースされたリマスター盤を手に入れるまでは本アルバム全体を聴いたことありませんでした。

 ではジェフの参加した楽曲についてしぼってコメントを書いてみます。
(2) Night By Night
 ジェフがスティーリー・ダンとのセッションで初参加となる記念すべき楽曲です。ジェフは出だしから "た・ドゥっと・シャ・シャ〜ん" と得意のパターンを入れて痺れさせてくれます。ハイハットで刻むビートの目の細かさは One-Hand 16-Notes でプレイしているのでしょうか? だとしたら何とも象徴的なじゃないですか。このアルバムではほとんどの曲をジム・ゴードンがプレイしているようなのですが、その中でもこのハイハット・ワークは一枚突き抜けた感があります。十代にしてこのプレイですから、恐れ入ります。曲の途中でリズムだけになるパートがあるのですが、ここもしっかり聴かせてくれます。
 なおスティーリー・ダンはこの曲をシングル向けとして考えていたようですが、実際にはそれは実現されませんでした。

(4) Barrytown
 この曲にはジェフは参加していないのですが個人的な思い入れからちょこっと書いておきます。おおよそスティーリー・ダンらしからぬ曲なのですが、結構気に入っているんですよね。どこが良いのかと聞かれても旨く説明できないのですが、ただ曲の雰囲気とでも言えばいいのか。スティーリー・ダンとしてはあっさりし過ぎた感じなので彼らのイメージのとは程遠い気もするのですが。それでも好きな曲のひとつですね。私にとって最も彼等らしい感じというのはアルバム中最後の曲の (11) Monkey In Your Soul なんですね。それこそステレオ・タイプと言われちゃいそうですが。

(6) Parker's Band
 ジェフの真骨頂発揮といった感のあるプレイで、ジム・ゴードンとのダイナミックなツイン・ドラムを楽しむことが出来ます。私の予想としましては右のチャンネルに収まっているのがずばりジェフだと思います。イントロからぶちかましてくれる軽快なフット・ワークはジェフそのもの、かな (?) あの絶妙のタイム感というかタメはジェフならではのものでしょう。一方の左チャンネルから聞こえるジム・ゴードン。このアルバムにおける彼は多くの曲において割と重いバスドラムを聴かせてくれます。もちろん曲毎にその辺りはいろいろと変えてはいると思いますが、ジェフのバス・ドラムとは明らかに違って聞こえます。

(10) Charlie Freak
 ジェフは『うそつきケイティ』のセッションに関するインタビューにおいて彼の叩くシャッフル・ビートのお手本はジム・ゴードンにあるとネタばれしてるわけですが、この曲におけるジム・ゴードンのプレイなどはかなりジェフに影響を及ぼしてるんじゃないかな〜と勘ぐってしまうですが、どうでしょう。前半部分はごく普通のシャッフル・パターンであり、途中からゴースト・ノートを取り込んだ形で演奏しています。"Blcak Friday" 然り、TOTOを結成してからの "子供達の凱歌" などはまさにこの辺のプレイ・スタイルからヒントを得ているのでしょうか。そう考えると初期のジェフというのはバナード・パーディというよりもジム・ゴードン的なんでしょうかねぇ〜 今までこんなにジム・ゴードンのプレイって真剣に聴いたことは無かったのですが、彼のプレイも滅茶苦茶カッコいいですね。(8) Pretzel Logic、(10) Charlie Freak は何度聴いても飽きないです。特にこの二曲はバスドラムのヘビーさが耳に残りますが、ジェフが使用しているものよりもインチの大きい物を使用しているのか? それともチューニングよるなんでしょうか? ぜひドラマーさんにご意見をお聞きしてみたいです。

 本アルバムでドラムを担当しているのはジェフを含めて三人。オリジナル・ドラマーであるジム・ホッダー、そしてジム・ゴードン。はっきり言ってボッ〜と聞いていたらどの曲で誰が叩いているのか判断しかねるでしょう。それ位三人のプレイ・スタイルは似たり寄ったりなんだと思います。今日でこそ多くの人がジェフのプレイした曲がどれであったかを知っているわけですが、いきなりこのアルバムをポンと渡されて「どの曲でジェフが叩いているか当ててみて」と言われたら、私は多分正確に判断出来ないでしょうね。もちろんジム・ゴードンを師と仰ぐジェフですからプレイ・スタイルが似ていたとしても不思議ではないわけで。しかしジェフのプレイが他の二人と圧倒的に違うのは、それはジェフが真のロックンロール・ドラマーということに尽きると思います。私がこんなことを書かなくてもそんなことは百も承知のこととは思いますが。まだまだ若さが溢れ出しているジェフには勢いがあり、それがジェフの叩くドラムサウンドの端々に感じられます。このアルバムでのプレイはたったの二曲なわけですが、そのことを強く意識させられました。
Steely Dan Pretzel Logic
2000年にリリースされたリマスター盤『Pretzel Logic』
MVCZ-10074
Universal Victor Inc.
Steely Dan Katy Lied_Remaster
 バック・ジャケット
Steely Dan Pretzel Logic inner
 特殊な方法で焼き付けられた写真を用いられた内ジャケット。
Rikki Single
 全米第4位までかけ上った大ヒット曲「Rikki Don't Lose That Number」
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