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1973年8月 . . .
ドラムロールが場内に響き渡る . . . .
「Ladies And Gentlemen, Sonny & Cher ! 」
ファンファーレと共にショウの始まり

 前年ソニー&シェールのオーディションに合格したジェフ。彼らと行動を共にするようになってから早一年、この記念すべきライブ・アルバムはその活動の集大成といえるべきものではないでしょうか。本アルバム発表前後にリリースされたと思われるソニー&シェール名義の『Mama was a Rock And Roll Singer Papa used to write all her songs』 (注1)、シェール名義のソロアルバム『Bittersweet white Lite』 (注2)の二作品にもジェフは全面的に参加しており、ソニー&シェールの二人には相当気に入られていたと推測されます。ジェフのプレイは19才という年齢を感じさせない程安定したプレイが出来るまでに成長しているように感じ取れます。そしてジャック・ドーティの『Jack Daugherty And The Class Of The 1971』 (注3)ではまだ本当の意味での "ジェフらしさ" というのものが出ていなかったように思えるのですが、このアルバムではそれをハッキリと確認することが出来ました。

 さて本アルバムはそう言った意味で申し分ない位に良好な仕上がりとなっていると思うのですが、一つだけ残念なことがあります。それは「語り(M.C.)」の部分が非常に "多く"、しかもそれが "長い" ということでしょうか(^^; この時期のソニー&シェールの圧倒的な人気はというとは歌の合間に挿入される二人の巧妙な会話によりもたらされた面もあり、このような形のラスベガスでのショーともなれば当然この「語りパート」も求められるたものでしょうから、それを収録したというのは至極当然なわけです。が、しかし我々ジェフ・マニアとしてはやはりどうしてもこれらの「語り」部分をカットしてでも演奏された曲を一つでも多く収録して欲しかったです。ただ前述したような性質のショーなわけですから、実際にどれだけの曲が演奏されたかは分かりませんが。
 それと本アルバムがジェフの "ライブにおけるプレイ" を堪能出来る" 数少ない素材であることには間違いありません。実際これだけ長いジェフの "芸歴" の中でもレコードに "正式" に記録されたライブ音源といえば、実にこの『Live In Las Vegasu vol.2』とGreg Mathieson Project 『Baked Potato Super Live!』の二作品なのです(Los Lobotomysも加えれば三作となりますが、ここではあえてカウントしないでおきます)。本当に少ないんですよね、驚くべきことではありすが。というわけで本アルバムはジェフの生のエキスがたっぷり詰まっているという点からも、まだソニー&シェールでのプレイを未聴の方にもお勧め盤であると思います。

 収録された曲はソニー&シェールのお馴染みのヒット曲と『Mama was a Rock And Roll Singer Papa uesed to write all her songs』に収録されたものが中心に演奏されています。収録日の方はどうやらツアー最終日の模様のようです。私の英語の読解力も甚だ当てにはなりませんが、どうもソニーの会話からそんな雰囲気が伝わって来ます。

 ジェフのドラミングについてよく言われることに、その溢れんばかりのパワー感がありますが、このライブでもその力をいかんなく発揮しています。ドラムのシェルが芯から鳴っているかのようなサウンドはいかにもジェフ・ポーカロそのものです。素晴らしいです。ドラム素人の私が言うのはおくがましいのですが、この時点でプレイ・スタイルはほぼ完成の域に達しておりますね。勿論、年を追うにつれその円熟みは増していくわけですが、19歳にして完成されたスタイルを持ち合わせていたのです。もっともそれだけの "もの" がなければこの華やかな場で演奏しているわけもないのですが。それにしても驚きだな〜

 一緒にプレイしているメンバーですが、ベースはデヴィッド・ハンゲイト . . . ちなみにデヴィッド・ハンゲイトはソニー&シェールに参加した当初ギターをプレイしていたようでライブの第一作目(当アルバムはタイトルから分かるようにVol.2とはなっていますがvol.1とは特に関係はありません) ではギターを担当しています。そしてギターにはディーン・パークスとダン・ファーガソン、キーボードにはデヴィッド・ペイチ! そうですデヴィッド・ペイチなんですね。この時期もジェフと行動を共にしていたんですね。いやはや、この若者達は一体何なんでしょうか!? しかもデビット・ペイチに至ってはリード・コンダクターとしてもクレジットされていますし、アルバムの中ではアレンジャーとして紹介されています (!) かなり重要なパートを任されていたわです。

 では内容の方に話題を移しまして、冒頭で紹介した通り「ソニー&シェール」というアナウンスに続いて演奏がスタートします。(A-1-a) All I Ever Need Is You スタジオ・バージョンとはかなり趣が違いアップテンポのアレンジに仕上げられておりまして、ブラス・セクションも加わったことでいかにもラスベガスというゴージャスな雰囲気が良く出ています。歌い出しはシェールから始まります。そして2バース目に入る直線に客席から拍手が沸き上がるところから想像すると、どうやらここでソニーの登場となるようで、例の "よたった" ようなダミ声で歌い始めます。ついでに書いておきますとこのセカンドバースから右チャンネルにタンバリンがインして来るのですが、誰が叩いてるんでしょうね。このライブではアラン・エステスは同行していないようなのですが。この曲はソニー&シェールの代名詞的な曲のようで、彼らのコンピュレーション集にはやたらこの『All I Ever〜』ってタイトルが付けられています。
 (A-1-b) Music-Comedy Dailogue 次曲に入る前にソニーによるトークが入ります。何やら客席に受けるようなことを話しているようなのですが、私には理解不可能でした。この間バックでデヴィッド・ハンゲイト、デビッド・ペイチ、ジェフはフリースタイルでリズムを刻んでいます。ここでのデヴィッド・ハンゲイトのベースは結構ハメを外し遊んでいて興味深いです。
 (A-2-a) I Can See Clearly Now〜(b) You've Got A Friend 〜 (c) Where You Lead 〜 (d) Reprise: You've Got A Friend のメドレーはアルバム中、最初のハイライトだと思います。まず "I Can See Clearly Now" においてジェフはスタジオ盤とはリズムパターンを変えて来ており、尾崎亜美の"プリズム・トレイン" 等で聴かれるジェフお得意のバスドラのパターン "ドゥン・タタ・ドゥン、ドゥン・タタ・ドゥン" を披露していまして、更にこれでもかっていう程手数も多いです。若さの象徴なのでしょうか。ノリノリのジェフは3バースに入ってからはハイハットからシンバルに切り替えてビートを刻み、これでもかと言わんばかりに今度はタムによる "タカ・ドゥドゥ・ターン" のフレーズを連発しまくります。続く二曲はいずれもキャロル・キングのペンによるのですが、これはカバーなんでしょうか? それとも書き下ろしなのか? 勉強不足ですいません。"You've Got A Friend" でジェフはしっとり聴かせるように叩いていますが、随所にジェフらしさがチラホラしてますよ。特にタム系統が。 "Where You Lead" で再びアップテンポに戻り、"You've Got A Friend" をリプライズします。曲の繋ぎ方とかが見事なのですが、この辺りはデビッド・ペイチの仕事なのか? 決めのフレーズは絶対にジェフだと思います(理由はないけど . . . .)。
 (B-1-a) Introduction 再びソニーのトークです。(B-1-b) You'd Better Sit Down Kids 『雨に唄えば』を彷彿させるようなバッキングでしっとり聴かせてくれスローナンバーです。
 そして二人のギターリストのうちどちらが弾いているのか分かりませんがワウワウをかけたユニゾン・ギターリフで始まる(B-1-c) A Cowboy's Work Is Never Done 非常にヘビーなタイプの曲です。ジェフもこのノリに合わせてかなりヘビーに叩きこんでいます。バスドラムの入れ方がちょっと変わっているかな?
 (B-1-d)Band Intoroduction ここ演奏を小休止してバンド紹介をしてくれます。続いてまたトークが始まり、いつの間にか(B-2) I Got Your Babe に突入。この曲も確か全米ナンバー1ソングじゃなかったでしたっけ? 1965年かな? 曲の終わりにソニーが「Good night everbody. God Bless You. Thank you everybody」と言っているところから、ここで第一部の終わりということなのでしょう。あくまで想像ですが、一部、二部という構成になっていたんじゃないでしょうか? じゃないとここから先がアンコールでは、アンコールパートが長すぎますもんね。
 (C-1)Comedy Monologue 再び幕が開きソニーの「sensation . . . ..」とトークが始まります! この部分がまた異〜常に長いんですよ〜、何を話しているのかさっぱり分かりません。話している内容が理解できれば楽しいんのでしょうが。最後はシェールによる落ちの一言があって次の(C-2) Gypsys, Tramps & Thieves に突入します。この曲はシェール名義の曲で1971年には全米ナンバー1に輝いています。スタジオ盤とはまるで別物のように仕上がっており、超カッコいいです。ジェフの叩き出すビートが燦然と光り輝いています。曲も周到ですね。
 ニール・ダイアモンド作の(C-3) Brother Love's Traveling Salvation Show はスタジオ盤『Mama was a Rock And Roll Singer Papa uesed to write all her songs』にも収録された曲。曲に入る前にデビッド・ペイチの弾くピアノが客席を煽っています。とにもかくにも、この曲も非常にいいです。冒頭のソニーのトークは一応曲として台詞になっているようでスタジオ盤と同じことを (恐らく) 話しています。この曲でもジェフは大活躍! 再び "タカ・ドゥドゥ・ターン" のフレーズを連発しまくり、大暴れ! スタジオ盤では比較的大人しめにプレイしていたジェフですが、このライブでは呪縛が解けたように本当にのびのびとプレイしているのが印象的です。
 (C-4) You And I はソニーが再びしっとりと歌い上げるバラード・ソング。(
 D-1-a) Superstar ご存じカーペンターズによる大ヒット曲です。作者はデヴィッド・ハンゲイトとジェフが奇しくも出会った家の持ち主のレオン・ラッセル。イントロだけ聴くとジェフ・ベック・グループの"Sugar Cane"をいつも思い浮かべてしまうのですが、歌に入ると「あらっ」とコケてしまいます。
 (D-1-b) Comedy Dialogue コメディー・ダイアローグです。長い!
 そして何と言ってもジェフ・マニアにとっての最高のハイライトはこの (D-2) Bang Bang (My Baby Shot Me Down) ですね。何がって、何と何とこの曲では短いながらもジェフによるドラム・ソロが含まれております! この曲もソニー&シェールの大ヒット曲でありまして、ジェフに言わせると "Zeppeln Feel" の曲ってことになりそうな位ヘビーなタイプの曲です。この手の曲にはソニーのドロ〜ンとしたボーカルが非常にマッチしています。曲のエンディングに差し掛かったところで一度曲がブレイクします、ここでソニーが語り始めます . . . .。
「Now this is my favorite part of the song because what happen it guess to be emotional ending . . . .(途中略)Here we go Ready Cowboy?」とジェフに声を掛けるとジェフが答えます。
(注1) Sonny & Cher - Mama was a Rock And Roll Singer Papa used to write all her songs
(注2) Cher - Bittersweet white Lite

「One do it ? Done! 」
ドラムイン!
「Hey Alright! Shot Me!」
ドラムイン!
「Shot Me」
ドラムイン!
「Shot Me!」
ドラムイン!

「Let me stand like . . . .My baby my baby shot me down」と、ここで再び曲に戻るわけですが、どうやらレコードはここテープ操作をしているようで、本当はこのやり取りがもっと続いているようなのですが、こうすることで無理矢理曲をエンディングに持っていきます。そしてアルバムの方もフェイドアウトしながら針が上がっていくという、何か唐突で中途半端な終わり方を迎えてしまいます。完全にフェイド・アウトしてしまう前にソニーが「Jeffrey Porcaro on drums Ladies And Gentlemen Jeffrey Porcaro on drums」って叫んでいるのが微かに聞こえて来ます。この辺のやり取りを聞きくと「ジェフは愛されていたんだな〜」と、じ〜んと感動しちゃいますね。もしこのアルバムに収録されているようにこの "Bang Bang" が実際のライブでも最後に演奏されたなら、この最高に盛り上がるところでジェフを起用したわけですよね。ジェフの腕も確かなものだったでしょうけど、この愛すべき若干19才の神童はソニー&シェールの本当に二人に可愛がられていたんじゃないですかね . . . .。グッスん . . . .。肝心のドラムソロの方ですが、まぁはっきり言って完成されたソロとは言い難いですね、途中数カ所でバランスも崩したりしていますから。まぁ、こんなことも出来ます!って感じのものだと思って下さい。ガットのようなスーパープレイを期待してはいけませんです、ハイ。

 そろそろまとめに入りまししょう。というわけでこの本アルバムですが、ジェフ・マニアは間違いなく手に入れておくべきでしょう! 中古レコード店等で見かけた場合は迷うことなくぜひ購入することをお勧め致します。私はこのアルバムを聴くまではソニー&シェール自体を古臭いオールディーズと思っていたわけですが、どうしてどうして結構楽しめちゃいます。「ジェフのドラムを聴きたい」という想いから幾度となく繰り返し聴き続けているうちにすっかり彼らのサウンドも好きになってしまいました。ベッド・ミドラー主演の映画『ローズ』とポール・マッカートニーのボードビル・テイスト調に拒絶反応がない人なら間違いなく気に入ることでしょう。へたなAORを聴くよりもずっと上質じゃないかと思います。というわけで "『ソニー&シェール』バンドやりたい人集まれ〜!" ってそんな奴はいなか . . . .でもその位好きになってしまいました。繰り返しになりますが、このアルバムについての難点は冒頭に書いたようにあくまでラスベガスでのショウを収録したものなので2枚組のレコードにしては収録曲が少なくてトークが結構な割合を占めてしまっていることでしょう。それでも英語が堪能な方ならこの二人の軽快なトークも楽しめることでしょう。

(注3) Sonny & Cher - All I Ever Need
 現在このアルバムを入手するのは非常に困難ではあるようですが、『Guest Book』に書き込みがありましたように本アルバムより抜粋された形でCD化もされております。それらはいずれもベスト盤という形で、計2種類のものが発売されております。私がこのレコードを入手する前に購入していたのは『All I Ever Need Is You』 (注3) というタイトルのもので、こちらには "Bang Bang" が入っております。そしてもう一枚『All I Ever Need: The Kapp/MCA Anthology 』 (注4)の方には "All I Ever Need Is You" 、 "I Can See Clearly Now" 、 "You've Got A Friend" 、 "Where You Lead" 、 "You'd Better Sit Down Kids、 "A Cowboy's Work Is Never Done" 、 "Band Intoroduction、 "I Got your Babe" 、 "You And I" 、 "Superstar" 、 "Comedy Dialogue" が収録されています。両方のアルバムを手に入れればほぼ曲が揃いますね。ただし、両CDともベスト盤でありますので殆どの曲が重複してしまいますが。なお『All I Ever Need: The Kapp/MCA Anthology 』なら比較的容易に手に入ることと思います。都内の大手輸入盤店になら在庫があるのではないでしょうか。
 それから余談ではありますが、私はこの『Live In Las Vegas Vol.2』をつい最近入手したわけですが、何とこのレコードUnsealedでした。そうです未開封品だったのです。20年以上の、しかも既に廃盤になっているレコードが未開封であるとは。ある所にはあるもんだ . . . .と妙に感心してしまいました。
(注4) Sonny & Cher - All I Ever Need The Kapp / MCA Anthology
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