ジェフとBassリー・スクラーの組み合わせというとこで、記憶にひっかかるとこがありまして確認してましたら、見つけました。
76年リリースのジャクソン・ブラウンの名盤、「プリテンダー」です。
アルバム全8曲中、ジェフは4曲参加(うち1曲はBassチャック・レイニーと)。LPでいうとジェフはB面の全曲をまかされてます。他は2曲でジェフのアイドルのジム・ゴードン、1曲がラス・カンケル、残る1曲はドラムなしという構成です。ジェフはこのアルバムの最後を飾るタイトル曲を演奏しているところをみると、メインドラマーの待遇だったのでしょう。
ここでのジェフのドラムサウンドとプレイのニュアンスはあの「うそつきケイティ」でのそれにとても近いです。おそらく同じセットに同じようなチューニングでセッションに臨んでいたのではないでしょうか。個人的にこの音(スネアとタムがとてもタイト)と演奏はかなり好みです。当時、ジェフはそうするのが好きだったのだと思われるのですが、スネアのバックビートの前に装飾音的にヘッドの上でスティックのチップをカサカサっと転がすのです(特にシンプルな8beatのとき)。「うそつきケイティ」の中でも頻繁にやってますし、のちのセッションでもよく聴かれます。最初はジェフの手癖かなあと思ってたのですが、同時期のセッションでも全くそうしてないときもあるので、意図的にやってるのかとも思うし、逆にそれをしないときのほうが意図的なのかもしれません。ともかくあのスネアの「カサカサ音」にチラッとジェフらしさを感じてる方は多いのではないでしょうか。いわゆるゴースト・ノートというにはちょっとちがうんですけど、わりとそれが手癖になってるドラマーはいるだろなあ思います(実は私もその一人)。ただ、この頃のジェフはスネアのスナッピーをかなりキツめにしてある感じなので、ロール音の粒立ちはハッキリしてます。それにマッチさせるように、ハットの刻みもチップ音をきれいに出してることが多く、あまりラフには叩いてません。そういうとこ考えてるなあと思います。きっとジェフ自身が「自分が気持ちよく聞こえるように」やってたら自然にそうなったという感じではないでしょうか。そのへんがジェフっぽいとこかな、なんて思ってます。
ジャクソン・ブラウンの話からそれてしまいました。
このアルバムを聴いて、やっぱりジェフの歌モノサポートはうまいな〜と感じます。字にすると「上手い」とか「巧い」じゃなくて、ともかく「旨い!」のです。その歌、その曲にドラムをフィットさせるにはどう叩けばよいか、というのを感じとる&選びとるセンスが並外れています。あのドラムで歌う人はかなりいい気分になれると思いますし、他のパートの演奏者もそうだと思います。だからジェフが参加することで、結果的にその曲全体の質が上がるということも起こりうると思います。ジェフはアレンジの意図の理解力が高いので、セッションにおいては自分の役割や領域をきちんと心得てますから、決して「やり過ぎない」のです。きちんと他の演奏者やアレンジ上の仕掛けを生かすためのスペースを残します。そのかわりにビートのグルーヴ感へのこだわりがとても強いのだと思います。バンド編成のなかでドラムのサウンドはとても強いものなので、叩きようによって楽曲のムードを簡単に左右してしまいます。ジェフは若いときからそこを本当によくわかってるドラマーでしたよね(しかもちゃんとロックしてる!)。これはそんなジェフの持ち味がよく出てるアルバムだと思います。