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(注1) 何としても手に入れなければならない物がある。
何としても手に入れなければならない物がある(注1)
それはジェフのヘッドフォンだ。
何としても手に入れるのだ、K240 Sextettを。
何としても手に入れなければならないのだ。
何故なら、それがジェフのヘッドフォンだから。

オークション形式のため、入札金額は最低限にしてある。
いきなり、ドカッと入札してもよいのだが、いたずらに値が吊り上がる事態は避けたい。
なんせ、相手は世界である。
どんなヤツがいるか分からないのだ。
たまに更新される高値に対して、私は直後に入札し直した。
画面上では全く変化がないが、このオークションは水面下では進行しているのだ。
世界中の人間がこのオークションを見ているはずなのだ。
これは世界選手権なのだ、ワールド・カップなのだ、世界大戦なのだ。
負けるわけにはいかないのである。
オークションの終了日は日曜の朝6時。
それまでは気が抜けない。
決して気を抜いてはならないのだ。
落札するまでは…

土曜日、久し振りに仕事が早く片付いた。
厳密に言うならば、決して片付いていないのだが、来週でいいや、と判断したのだ。
となれば定時早々に帰宅した。
たまには子供の顔も見たいものである。
晩酌は私の日課だ。
今日の料理にはワインが合いそうだ。
我が家には小さいながらもワインセラーがある。
ほんの12本程度しか入らないが、今は減る一方で増えることはないセラーの中から白を1本開けた。
高いワインではないが、満足だった。
通常であれば2/3も空ければ十分なのだが、この日はよほど調子が良かったのか、1本目を空け、2本目を飲み始めていた。
いや〜ごきげん ごきげん。
ほんわか酔っ払って、子供と戯れて、これ以上の至福の時ってないよね〜

しかし、事件はその時起こった…らしい。
気が付くとベッドの中だった。
2本目を開けたところまでは覚えているが、それ以降の記憶がない。
ワインを2本飲み切る技量は持ち合わせていないので、2本目は余っているはず。
残ったワインはどうしたのかな? 冷蔵庫に入れたのかな?
いや、それどころではない!
私はハッと気が付き、急いでパソコンを立ち上げた。
メールが届いていた。
「オークション終了〜」
私は青ざめた。
No―!, no―!, no―!, no―! no―――!
時計に目を向けると7時を指していた。
オークションは私の入札を待つことなく無残にも終了していたのだ。
ほんの1時間前に。
あれだけ探して、ようやく見つけたジェフのヘッドフォンは既に他人のものであった。
私は呪った。
自分の愚かさを。
悔やんでも悔やみきれない。
あんなレアなヘッドフォンなど二度とお目にかかれないだろう。
しかし、自分がバカだったのだ。
アホだったのだ。マヌケだったのだ。
オマエなんか死んでしまえ。
自分に言った。
今すぐジェフの元へ行きたかった。
管理人さんとの二人三脚のプロジェクトの進行は、愚かな私のせいで途切れてしまった。
管理人さんにメールした。
スミマセン、スミマセン。
私はとんだ大失態を犯しました。
ごめんなさい、ごめんなさい…
私は立ち直れなかった。
私を慰めてくれるのはジェフのヘッドフォンしかない。
それしかないのだ。
こうしてK240 Sextettの夢は断たれた。
ジェフのヘッドフォンの夢を。

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