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RED氏の考察
 今回は、ほんの些細な受け答えから始まりました...。ある日、管理人さんとの会話の中で、

「ジェフって、何でヤマハからパールに換えたんでしょうね?」と聞かれたので、私は余り深く考えずに、

「やっぱり、ヤマハを使う以前からラディック、グレッチを使っていたみたいなので、メイプル(注1)の胴が好きなんじゃないですか?」、なんて軽い気持ちで答えたものの、実際のところ半信半疑だった私は確信を得るために、早速いつものお助けマン"RED氏"に当時(1970〜1980年代)の海外のドラム事情を伺おうとメールをしました。

RED氏曰く、
「それはメーカーによって違ってたり、同じメーカーであっても'70年代と'80年代とでも異なります。細かい事を言えば大変なことになりますが、そうですね、みんなが頑張ってオール・メイプルに近づけようとしてる過渡期と言えるでしょうね。特に'70年代はその傾向が強いんじゃないでしょうか。
 '70年代はラディックもグレッチもメイプル・プライ(注2)とされていますが、しかし良く見てみると木の中の色が微妙に赤かったりもするので、マホガニー(注3)ポプラ(注4)をサンドイッチしたメイプル・プライなのかもしれません。ま、過渡期なんで色々なパターンがありますね。

(注8)レインホースメント
 ここからは私感なんですが、ジェフがグレッチを使っていたというのは有名な話しですね。グレッチの場合、'70年代から急に音質が硬くなります。そもそもグレッチの作るドラムは '50年代〜'60年代までは "ダイキャスト・フープの採用"(注5) と、"オーバー・サイズ口径"(注6)、"逆エッヂ加工"(注7)、"エアーホールが無い"、当時は普通だった "レインホースメント(注8)が無い" 等のユニーク、ア〜ンド、アバウトな仕上げによって、元々ビ・バップ系のレコードで聴かれるような「ガラガラゴーーン♪」のような硬質で癖のある音だったのですが、
(注9)通称ストップ・サイン・バッヂ時代
'70年代の通称ストップ・サイン・バッヂ時代(注9)から、よりストレートで硬質な音になります。多分シェルがよりオール・メイプルに近づいたからでしょう。その結果、鳴りが硬質となり逆に低音が出にくくなってしまった。よってジェフは通常は22" バス・ドラムを使用してますが、グレッチの時は低音を補う為に24" を使った...、あくまで私感ですよ!

 僕は、ジェフがラディックのウッド・シェルのセットを使っていたということを知りません。それは、多分ジェフのお父ちゃんのジョー・ポーカロがラディックとエンドース契約していたので、家にあったドラム・セットを使っていたという、本人の趣味とは違う部分で、それしか叩けなかったという事だったと思うのですが...? ちょうど日本のドラム少年がパールのチャレンジャー辺りから入る様に、アメリカの少年ジェフは何も考えずに自然にラディックから入ったのでは? あたかも巨人ファンの息子が巨人ファンになるように...。

あくまで〜、あくまで〜〜私感ですよ!
だって、ラディックとグレッチって両社ともメイプル・プライといえども両極端な性質の音なんですもの!

 その後、パールとエンドース契約を結ぶ流れからして、よっさんが言うように、ジェフはメイプルの硬質な音を好む傾向にあるみたいです。グレッチとパールは割りと近いサウンド・キャラクターを持っていると思います。両社ともレインホースメント無しの硬質なメイプル・サウンドです。その流れからするとオープンで暖かい音のラディックは浮いてしまいますね。'70年代のラディックは、まだレインホースメントはあるし...。
 あ! 今でこそレインホースメントはふくよかなサスティーンには不可欠とされてますが、当時はただのシェル補強材扱いです。当時、レインホースメントはサスティーンを殺すとまで考えられてました。そう考えると、ジェフがグレッチ --> パールとした後、次にブレィディに行くのも自然ですね。僕はブレィディはよっさんのスネアをちょこっと触っただけしか経験はありませんが、ブレィディこそ究極の硬質サウンドですよね。でも、ジェフが一概にレインホースメントは嫌いってことは考えられません。だってスリンガーランドのラジオ・キングを愛用してるんだから。

 ? いや待てよ、よっさんは「ジェフはラジオ・キングの内側にベニヤを貼ってレインホースメントを...(リズム&ドラム・マガジンNo.3(1983年7月)より、Modern Drummer誌1983年2月号より転載 DRUM BROTHER P.33)(注10) って??? いや、それは神を冒涜しているぞ〜!!??
 でも有り得なくないジェフのレインホースメント嫌い。あくまで〜、あくまで〜〜、あくまで〜〜〜私感ですよ!(笑)

 さて、ってことで、では何故ジェフがヤマハを使ったのか? となる訳ですが、ヤマハを使ってた時代ってパールの前なんですか? 僕は勝手にパール時代の途中にヤマハ時代があるのかと思ってました。なんかパールと喧嘩 (?) でもしたのかなっと。ジェフの事だから千葉のパール工場にも行ったそうですし、ドラム開発について、そこで一悶着あったとか...。

(注13)ヤマハのような、タム・タムが揺れてサスティーンを殺さないマウント方式
 どうにせよ、ジェフが当時のヤマハのバーチ・シェル(注11) の音を好むとは考え難いです。ちょっと考えてみたのですが、ジェフは早くからRIMS(注12) を愛用してますよね。それは、ヤマハを使う前からですか? ジェフはRIMSの様なアイソレーション・システムとまではいかないまでも、ヤマハのような、タム・タムが揺れてサスティーンを殺さないマウント方式(注13)を求めたんじゃないでしょうか。しかし頑なにパールはあの "棍棒タム・ホルダー" を変更しようとしなかった。だから、音が嫌いでもヤマハを使った...だったらネタ的には面白いなぁぁぁ〜。ジェフって、本当にサスティーンには拘ってそうですもんね。ラックを使ってタム・タムとバス・ドラムの干渉を軽減させたり、両面クリアー・ヘッドを世に広めたのも彼ですもんね。ま、ラックってのはスタンド類の簡素化が目的で、サスティーンの干渉云々って事までは当時考えてなかったかもしれませんが...。

 とにかく、硬質なアタック音に綺麗にのびるサスティーン...、それがジェフの持ち味ですから、パールの、あの棍棒タム・ホルダーはジェフ的には、
「マジ〜? ありえないしぃ? みたいな〜〜〜?」だった筈です。ヤマハのタム・ホルダーを経験すれば、ジェフは絶対ヤマハ方式を好むに違いありません。
(注1)メイプル
 カエデ科の落葉広葉樹。材質は硬く、衝撃性にも強い。高音域の特性が優れており、サステインが良いとされている。
(注2)メイプル・プライ
 メイプル材を貼り合わせて作り上げたもの。
(注3)マホガニー
センダン科の広葉樹。木質はやや硬く、中音域特性に優れている。
(注4)ポプラ
ヤナギ科の広葉樹。材質は軽くて弱く、やや軟らかい。中高音域特性に優れている。
(注5)ダイキャスト・フープ
鋳型に溶かした金属を流し込んで成形 。
(注9)オーバー・サイズ口径
 オーバーサイズは何インチも口径が大きいというわけではなく、14"のスネアにレモの14"をはめたら、ん? キツイ? ってレベルです。イメージ的には、セルカバーを巻いてる厚みの分だけデカイ感じです。でも、メタル(ブラス)のスネアもデカイから意図してデカイのかも...by よっさん
(注7) 逆エッヂ加工
 逆エッジといっても綺麗に内側に山があるはワケではなく、平べったいけど、ちょっと山があるかな? それが外ではなく内側が高いかな?みたいな感じです...by よっさん
(注8) レインホースメント
 その昔には、多分製作技術の関係かなにかで、ドラム胴を真円に保つ為に装着されていたのではと、私は解釈してます。
 私が中学生の頃、音楽室で観たドラムは、胴自体はベニアみたいな感じでしたが、レインホースメントはプライではなく、1cm前後で厚みのあるスプルースみたいな白木のやわらかめの木だった様に記憶してます。これは、工作し易く高額ではない木材だからかも…?
 現在、パールではドラム胴がメイプルの4プライに、レインホースメントはメイプルの4プライが装備されてますね!大体が、ドラム胴と同じ厚さ(幅は多少違うのかなぁ?)のレインホースメントってのが一般的みたいですが、dwは、口径によって厚みがわざと変えてありますよ!小さい口径程薄目のレインホースメントです...by よっさん
(注9) 通称ストップ・サイン・バッヂ時代
ストップ・サイン・バッヂは、'70年代のグレッチのメーカーバッヂの総称。
http://www.gretschdrums.com/
(注10) 「ジェフはラジオ・キングの内側にベニヤを貼ってレインホースメントを...」
「このラジオ・キングはシェルがすごく厚くて、その上、僕はインサイドにベニアを貼っている」
リットーミュージック社刊ジェフ・ポーカロ"ドラム・ブラザー" P.33より
(注11)バーチ
  カバノキ科の広葉樹。コシのある暖かな音質。
(注12)RIMS
Gauger Percussion Incorporated社のタム・タムのマウント方式
Gauger Percussion Incorporated Online

(注13)ヤマハのような、タム・タムが揺れてサスティーンを殺さないマウント方式
 硬質合成樹脂ボールを8本のツメで固定。
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